内縁でも、財産分与はしてもらえるの?【弁護士が解説】

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。
財産分与についての質問です。

内縁を解消しましたが、この場合、財産分与はしてもらえるのでしょうか?

また、内縁の夫や妻が亡くなったのですが、この場合、財産分与や相続はしてもらえるのでしょうか?

 

 

 

 

弁護士の回答

まず、内縁の夫婦が両者とも生存中に内縁関係を解消した場合(離別の場合)には、財産分与を受けられます。

他方、内縁の夫婦の一方が亡くなった場合(死別の場合)には、財産分与や相続は受けられません。

したがって、死別の場合に財産分与に類する財産的給付を受けるためには、生前に、遺言の作成や生命保険の受取人への指定などの対応を行っておく必要があります。

 

用語の解説
内縁とは
「内縁」とは、男女が婚姻の意思をもって実際に夫婦生活を営んでいるものの、婚姻届を提出していないために法律上の夫婦とは認められない関係をいい、「事実婚」と呼ぶこともあります。
財産分与とは
「財産分与」とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を分ける制度をいい、その内容として、①夫婦の共同財産関係の清算的要素(清算的財産分与)、②離婚後生活に困窮する配偶者の扶養的要素(扶養的財産分与)、③有責の行為によって婚姻関係を破綻に導いたことに対する慰謝料的要素(慰謝料的財産分与)の3つの要素があります。

そして、内縁の夫婦が財産分与を受けられるかどうかについては、内縁の夫婦が両者とも生存中に内縁関係を解消した場合(離別の場合)と、内縁の夫婦の一方が亡くなった場合(死別の場合)とで、大きく法律関係や対応策が異なりますので、順にご説明いたします。

 

内縁の解消(離別)の場合

離別の場合には、内縁であっても財産分与を受けられます。

まず、内縁の夫婦が両者とも生存中に内縁関係を解消した、という離別の場合には、内縁配偶者であっても、財産分与を受けることができます。

民法768条は、規定上、法律上の夫婦の離婚の場合について財産分与を認めていますが、最高裁判所は、以下のように内縁関係の解消(離別)の場合にも、財産分与が受けられることを認めました。

判例 内縁関係の解消(離別)の場合にも、財産分与が受けられることを認めた裁判例

「内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得る」

【最高裁決定平成12年3月10日】

財産分与については、対象となる財産や分与の方法が問題となります。

財産分与について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

財産分与の解決手段

そして、離別の場合の財産分与を解決する手段としては、協議、調停、審判などが考えられます。

まずは、内縁関係にあった夫婦同士の話し合い(協議)によって、具体的な財産分与の内容を決めることが考えられます。

しかし、当事者同士の協議では解決しない場合も多くあります。

そこで、その場合には、財産分与調停や財産分与審判といった、家庭裁判所での手続きによって解決する必要が出てきます。

調停手続きについて、詳しくはこちらをご覧ください。

 

内縁の夫婦の一方の死亡(死別)の場合

死別の場合には、財産分与や相続は受けられません。

他方、離別の場合とは異なって、内縁の夫婦の一方が亡くなり、その方に相続人がいる、という死別の場合には、残された内縁配偶者は、財産分与を受けることができません。

この場合、亡くなった方の財産は、全て相続人に相続されることとなります。

そして、内縁配偶者には相続権が認められていませんので、遺言等がない限り、残された内縁配偶者は、亡くなった方の遺産を取得することはできません。

そこで、内縁の夫婦の一方が亡くなった場合に、残された内縁配偶者が、亡くなった方の遺産を分けてもらうためには、あらかじめ、次のような対応を行っておくことが重要となります。

亡くなる前の対応策:遺言の作成、生命保険の受取人への指定など

遺言の作成

まず、内縁配偶者がご健在のうちに、もう一方の内縁配偶者に遺産を与える内容の遺言を作成しておくことが、強力な手段となります。

このような遺言を作成しておけば、残された内縁配偶者も、相続人の遺留分を侵害しない範囲で、亡くなった方の遺産を取得することができます。

生命保険の受取人への指定

また、もう一方の内縁配偶者を生命保険の受取人に指定しておくことも、効果的な方法です。

生命保険金は、原則として遺産分割の対象財産とはなりませんので、相続権のない内縁配偶者であっても、受取人に指定されていればこれを受領することができます。

死亡退職金の受取人への規定

さらに、亡くなった方の勤務先の会社の退職給与規定において、内縁配偶者に死亡退職金を支給する旨を規定していることがあります。

この場合には、当該規定に従い、残された内縁配偶者も死亡退職金を受け取ることができますので、勤務先に確認されるとよいでしょう。

 

亡くなった後の対応策(相続人がいない場合に限定):特別縁故者

なお、死別の場合であっても、亡くなった方に相続人がいないのであれば、残された内縁配偶者は、特別縁故者として遺産の分与を受けることができ(民法958条の3第1項)、亡くなった方の財産を取得することができます。

この場合、家庭裁判所において、①相続財産管理人の選任の申立て→②特別縁故者としての相続財産の処分の申立て、という2つの手続きが必要となります。

 

 

まとめ

このように、離別の場合にせよ、死別の場合にせよ、財産分与やこれに類する財産的給付を行うためには、あなたの置かれている状況を法的に正しく分析し、さまざまな手続きや対応策を取る必要があります。

当事務所には、離婚関係の交渉、調停、審判、訴訟、そして遺言書の作成、保険関係等に至るまで、知識と経験の豊富な弁護士が多数所属しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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