婚姻費用の調停に相手が出てこなくても、婚姻費用を払ってもらえる?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

婚姻費用について相談です

私は主婦ですが、会社員である夫との離婚を決意し、子どもを連れて別居を開始しました。

そして、夫に対し、婚姻費用の支払いを内容証明郵便で請求しましたが、払う意思はない、との回答でした。

そこでさらに、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てました。

しかし、それでも夫としては、婚姻費用を払う意思がなく、話し合いをする意思もないから、調停にも欠席をして、今後一切出頭しない、との回答が来ました。

ここまでしても、私は婚姻費用を支払ってもらえないのでしょうか?

婚姻費用分担請求調停に相手方が出頭しない場合でも、審判という手続きによって裁判官が婚姻費用を決めますので、原則として、婚姻費用を支払ってもらえます。

 

 

婚姻費用とは?

弁護士今回の事案で具体的に説明すると、あなたは夫から、あなた自身とお子さんの分を合わせた生活費として、夫婦の収入の程度等に応じて計算された分担額を支払ってもらえる権利があります。

この生活費の分担額を、婚姻費用といいます。

この婚姻費用は、離婚が成立するまでは、別居をしていたとしても、あなたが夫から毎月支払ってもらえるものです。

したがって、これを取り損ねないように、夫に対して婚姻費用をしっかり請求し、その支払いを確保することが極めて重要です。

婚姻費用について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

婚姻費用の額の決め方について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

婚姻費用を払ってもらうための具体的方法

内容証明郵便の送付や、婚姻費用分担請求調停の申立てが必要!

夫の婚姻費用の支払い義務が具体的に発生するのは、あなたが、夫に対して、婚姻費用の請求の意思を明らかにした時点からです。

したがって、夫に対して婚姻費用を請求する際には、まず、請求の意思を明らかにしたことを証明するため、以下の方法が最善です。

  1. 内容証明郵便を用いて請求する
  2. 家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる

 

今回の事案では、婚姻費用の請求を、先に内容証明郵便の送付によって行っていますから、婚姻費用分担請求調停の申立て時点からではなく、内容証明郵便を送付した時点から、夫は、婚姻費用支払いの具体的義務を負うことになります。

 

 

婚姻費用分担調停に相手方が出頭しない場合

審判に移行して、裁判官が婚姻費用を決める!

裁判所ではさらに、今回の事案のように、相手方として婚姻費用を払う意思がなく、話し合いをする意思もないために、婚姻費用分担請求調停に出頭さえしない場合、婚姻費用はどのようにして決めるのでしょうか。

調停は、あくまでも話し合いの手続きです。

したがって、相手方が調停に出頭しない場合、そもそも話し合いができませんから、調停の期日を続けることに意味がありません。

そこで、あなたとしては、婚姻費用分担請求調停については調停不成立で終了させ、婚姻費用分担の審判に移行する、という対応が最善です。

婚姻費用分担の審判は、話し合いの手続きではなく、審問の期日において、当事者からなされた主張や提出された証拠を基に、裁判官が婚姻費用を決める手続きです。

したがって、相手方が家庭裁判所での審問の期日に出頭するかどうかとは関係なく、裁判官が婚姻費用を決めることができます。

調停や審判において、婚姻費用の額は、双方の収入と、お子さんの数と年齢などの情報を基礎として決められます。

そこで、あなたとしては、夫の源泉徴収票や所得証明書などの収入資料が入手出来ていれば、これを裁判所に提出することによって、夫の収入を証明することができます。

他方、あなたが収入を得ていれば、あなたの収入資料の提出も、裁判所から求められるでしょう。

また、相手方の収入が分からない場合でも、裁判所から、調査嘱託という手続きで夫の会社に対して年収を調査するという手続きを利用することができますし、どうしても年収が分からない場合でも、賃金センサスという統計データにより、夫と同年代の男性の平均収入があるとして、婚姻費用を決めることになります。

 

相手方の収入が分からない場合に、調停や審判においてどのように婚姻費用を決めるかについて、詳しくはこちらをご覧ください。

 

このような手続きを経て、最終的には、裁判官が、審判によって婚姻費用を決定します。

審判が確定した後は、審判書に基づいて、夫の財産や給料を差し押さえるなどの強制執行をすることができるようになりますので、夫に仕事や財産がある限り、婚姻費用を取り立てることができるわけです。

 

 

まとめ

このように、婚姻費用分担請求調停に相手方が出頭しない場合でも、審判に移行することによって、最終的には、相手方に仕事や財産がないという場合でない限り、婚姻費用を支払ってもらえます。

しかし、そこに至るまでには、様々な手続きを用いたり、できるだけ高い婚姻費用を決めてもらうためにはどのような主張が証拠が必要であるかなどの点で、専門知識が必要となってきます。

当事務所には、離婚や婚姻費用請求の手続きに詳しい弁護士が多数所属しておりますので、ご不安なことがあれば、何なりとお気軽にご相談いただければと思います。

婚姻費用を請求したい方は、こちらをご覧ください。

 

ご相談の流れについてはこちらをご覧ください。

 

婚姻費用シュミレーター
婚姻費用