財産分与のケーススタディ
財産分与におけるさまざまなケースをまとめましたので、参考にしてください。
夫婦間の借金
夫婦に借金がある場合には、その借金が生じた背景によって財産分与に与える影響が異なります。
食料品の購入や医療費、教育費など、夫婦が共同生活を送っていく上で欠かせないものを購入するために生じた借金については、夫婦共同の債務となり、借金をお互いに分け合って返済する義務があります。この場合は、財産分与の際に、借金がマイナスの財産として考慮されます。
例えば、プラスの財産が1000万円で、夫婦共同の債務が200万円の場合、財産分与の対象にするのはプラスの財産である1000万円から債務の200万円を引いた800万円となります。
他方、ギャンブルや浪費など、夫婦の共同生活を送る上で必ずしも必要ではないもののために生じた借金は、財産分与の際には考慮されません。したがって、借金の返済義務は、その借金を生じさせた片方にだけあります。
離婚後の年金・退職金
退職金も財産分与の対象となります。離婚時に相手が退職していない場合でも、将来退職金をもらうことが確定している場合には、同様に対象となります。
ただし、退職金が支払われる確証が無い場合は、退職金を財産分与の対象としない場合が多いようです。
退職金の財産分与は婚姻期間と勤続年数を考慮して決めます。具体的な計算方法は、
となります。
例えば、退職金1000万円、婚姻年数40年、うち勤続年数が20年だった場合、財産分与の対象は1000万円×20年÷40年=500万円となります。ここで妻の貢献度を考慮し、財産分与の割合を50%とした場合、分与される財産は250万円となります。
貢献度は夫婦で話し合って決めますが、話がまとまらない場合は調停を申し立てます。実際には、どちらがどれだけ貢献したかを判断するのは非常に難しい問題ですので、収入額だけではなく、家事労働も評価の対象として、5:5として認められる傾向にあります。
不動産のローン
夫婦が共同生活を送っていく上で欠かせないものを購入するために生じた借金は、夫婦双方が負担します。不動産の場合、たとえローンの名義人が片方だけであったとしても、夫婦で分与します。
例えば、マンションのローンが残り2500万円、売却価格が3000万円の場合、財産分与の対象になるのは売却価格からローンを引いた500万円となります。
売却せずに住み続けたい場合は、名義人を自分に変更し、ローンも借り換えて払う方法が考えられます。また、夫婦間で話し合ってお互いに了承すれば、名義を変更せずに住み続けることも可能です。
共働き夫婦の家事分担率
夫婦ともにフルタイムで仕事をしている場合、財産分与の割合は原則として5:5になります。ただし、共働き夫婦で家事を分担している割合が極端に偏っている場合は、家事労働分が財産分与の割合に上乗せされます。
例えば、双方ともに会社員の夫婦でありながら、婚姻生活では家事のほとんどを妻が担ってきたという場合には、その家事労働負担分が考慮され、財産分与の割合が多少なりとも妻に偏ることになります。

「離婚とお金」について
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