調停離婚
調停離婚とは
調停離婚とは、夫婦間で離婚への合意が得られない場合や、離婚への合意はあるが慰謝料や財産分与、子供の親権など夫婦間の話し合いではまとめることができない場合に家庭裁判所に離婚の調停を申し立てる離婚のことです。
離婚トラブルの場合はすぐに裁判で解決するのではなく、まず調停で解決することが義務づけ(調停前置主義)られています。
調停離婚では、離婚に関するあらゆる問題について同時に話し合いを行い解決できます。
しかし、調停離婚でも協議離婚同様の夫婦間の合意が得られなければ離婚はできません。
調停離婚の手順
調停離婚の手順を簡単に記載すると下記のようになります。
①申し立て
申し立ては、夫婦のどちらか一方のみで行うことができます。
全国の家庭裁判所にある夫婦関係事件調停申立書(無料)にて書面で行うか、口頭にて申し立てることになります。
調停申立書は簡単に記載できますが、親権者や、養育費、財産分与、慰謝料の金額の記入欄があり、希望金額の記載が必要です。
調停では、この申立書の金額をもとに、離婚給付金の調整されるため、金額の見当がつかない場合は、事前に弁護士に相談するなどして相場を理解べきでしょう。
詳しくは最寄の家庭裁判所で確認するか、お気軽にお問い合わせください。
②呼び出し状の配布
申し立てが受理されると、1週間~2週間後に家庭裁判所から第1回目調停期日が記載された呼び出し状が当事者双方に郵送されます。
調停期日にどうしても出頭できない場合は調停期日の数日前までに期日変更申請書を家庭裁判所に提出する必要があり、特別な理由なく、出頭しないと5万円以下の過料となります。
③第1回目調停
調停には必ず当事者本人が出頭しなければなりません。
弁護士を代理人として出頭させることができますが、本人と弁護士が同時に出頭することが原則です。
どうしても本人が出頭できない場合には、弁護士のみの出頭でも認められていますが、第1回目調停には必ず本人の出頭が必要です。
1回目の調停では、調停委員が中心となり、協議を進めていきます。
1回にかかる調停時間は、2~3時間です。
これは夫婦それぞれから30分程度、調停委員と話し合いを数回繰り返すためです。

④数回の調停
調停は2回目、3回目と約1ヶ月間隔で行われ、通常半年程度で終了するケースが多いです。
最終調停では必ず当事者本人の出頭が求められ、弁護士等による代理人のみの出頭は認められません。

⑤調停調書
調停調書の作成
数回の調停を行い、夫婦が合意に達すると調停調書が作成されます。
調停調書には離婚することに合意したこと、親権者やお金に関する事項が記載されます。
そして調停調書が作成された後には、不服を申し立てること、調停調書を取り下げることはできません。
作成する際に納得できるまで説明を受けましょう。
調停調書の提出
調停調書は調停調書作成日を含めて10日以内に調停を申し立てた側が、調停調書の謄本、戸籍謄本を添えて、離婚届を申立人の管轄もしくは夫婦の本籍地の市区町村役場へ提出します。
調停離婚では申し立て側の署名捺印があれば、離婚が成立します。
届出期間が過ぎた場合、離婚は無効になりませんが、3万円以下の過料となります。
調停での注意点とポイント
調停に臨む態度
調停は第三者を交えた「話し合いの場」です。
調停委員が第三者として双方の言い分に耳を傾け、話しをまとめてくれます。
逆に言えば、調停委員は第三者として当事者から聞き取った内容でしか判断することはできません。
したがって、調停に臨む際には、自分の言い分が過不足なく伝わるようにしなければなりません。
自分の言い分をきちんと伝え、納得のいく結論を得るためには、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
- リラックスし、落ち着いた状態で臨むこと
- 感情的にならず、冷静に言い分を伝えること
- 自分の気持ち、これまでの事実を正直に伝えること
- 自分の視点ではなく、客観的な視点で伝えること
- 調停委員の話に耳を傾けること
- 調停が円滑に進むように協力すること
- 疑問点や不明点があれば、積極的に質問すること
- 最終的な結論は自分自身でよく考えて出すこと
- 結論を出すことを急がないこと
なお、調停以外の場面で相手方から暴力を振るわれるといった不安がある場合は、事前に書記官に相談しましょう。
プライバシーは守られます!
調停委員が第三者といえども、夫婦間のプライベートな問題や、思い出したくもない事実を話さなければならないことは少なくありません。
正直にすべてをさらけだすということは、納得した結論を得るためにも重要なことです。
調停そのものは、裁判と違って非公開です。
また、調停委員には弁護士と同じように、秘密を保持する義務があります。
したがって、個人のプライバシーはしっかりと保護されますので、ご安心ください。
調停中の財産を守るには
調停の申し立てを行ってから調停が成立するまでには、少なくとも半年を要します。
財産分与や慰謝料に応じたくないと相手方が思っている場合、調停期間中に財産を勝手に処分したり、名義変更したりすることも少なくありません。
これをやられてしまうと、たとえ調停が成立して財産分与や慰謝料の額が確定しても、そもそも相手方から受け取れる財産がないという事態になってしまいます。
こうした事態を防ぐためには、以下のような方法があります。
調停前の仮の処分
相手方が財産を勝手に処分したり、名義変更したりするおそれがある場合、調停委員会に対して「調停前の仮の処分の申請書」を提出する方法があります。
申請書が提出され、調停委員会が必要だと認めた場合は、調停期間中の財産処分が禁じられます。
ただし、この方法には法的拘束力がありません。
相手方が処分を守らなかった場合でも、10万円以下の過料が課せられるのみです。
したがって、実際にはあまり利用されていません。
仮差押・仮処分
調停前の仮の処分には法的拘束力がありませんが、法的拘束力を持つ方法として、裁判所に対して「仮差押・仮処分」を申し立てる方法があります。
仮差押
金銭債権の執行を保全するために、裁判所の決定により相手方の財産の処分に一定の制約を加える制度です。
仮処分
金銭債権以外の権利の保全を図る点で仮差押と異なります。
仮差押・仮処分を受けると、相手方はその財産を勝手に処分したり移動したりできなくなります。
