養育費
養育費とは
養育費とは、子供が社会人として自立するまでに必要となる費用です。
衣食住の経費や医療費、教育費、娯楽費など、自立するまでに必要となるすべての費用が養育費にあたります。
期間の目安としては、成人する20歳や高校卒業までの18歳、大学卒業までの22歳となります。
養育費の取決めと確保
未成年の子供がいる夫婦の離婚は全体のおおよそ6割です。
離婚によって夫婦の関係は切れても、親と子の関係は切れません。
どちらの親にも子供を養育し、幸せにする責任があります。
離婚後の子供の生活基盤をどう確保するか、父母としてどう協力し合うか、取決めをすべきです。
また、子供のために、継続的な支払が続くよう、父母ともに努力しましょう。
養育費の算定
養育費の額は、負担する側の経済力や生活水準によって変わってきます。基本的には、双方の収入のバランスに応じて養育費を算定していきます。
財産分与や慰謝料は一括で支払うのが原則ですが、養育費は通常定期的に負担していきます。
目安として、裁判所が早見表を示しています。
【 養育費算定表はこちら ⇒ 養育費算定表(PDFファイル) 】
養育費の額を決めるのは難しい問題ですが、よく話し合って具体的に決めておかないと、後々トラブルになることもあります。
養育費の変更
その間、事情が大きく変わることもあります。
例えば、子供の進学の問題や支払い側の倒産・失業、受け取る側の失業、再婚などがそれにあたります。
基本的には、離婚時に決めた養育費の額や支払い期間を変更することはできません。
しかし、上記のように経済的事情が大きく変化した場合など、正当な理由があれば養育費の増額や減額が認められるケースも多くみられます。
まずはお互いに話し合い、合意が得られない場合には、法律の専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。
相手との交渉はもちろんのこと、その後、家庭裁判所に調停を申し出る場合でも、しっかりとサポートしてくれるはずです。
養育費についてのQ&Aはこちらをご覧ください。
養育費の支払請求
養育費の回収は大変
養育費の支払いが滞ってしまうことは少なくありません。
支払いが長期にわたることや、そもそも支払義務者の経済力が乏しいことが原因となっているようです。
養育費は債権です。
したがって、養育費を支払ってくれない相手に対して支払いを求める手続きは、債権回収の場合とほぼ同じであると考えてよいでしょう。
とは言っても、債権回収に馴染みの少ない一般の方には、交渉を含めたさまざまな手続きは困難な作業となるでしょう。
特に、離婚したばかりの専業主婦の方にとっては、非常に難しい問題だと思われます。
養育費を回収する方法
調停や判決などで決められた養育費の支払いが滞っている場合は、以下のような制度を利用することで支払いを確保することができます。
履行勧告
履行勧告とは、養育費を受ける側の申し出により、家庭裁判所が支払義務者の支払状況を調査した上で、養育費の支払いを忠告してくれる制度です。
法的な拘束力はありませんが、裁判所からの勧告なので、心理的なプレッシャーを与えることができます。
履行命令
履行命令とは、履行勧告しても支払わない場合に、養育費を受ける側の申し立てにより、家庭裁判所が支払期限を定めた上で支払いを命じてくれる制度です。
履行命令に従わない場合は、10万円以下の過料を課せられます。
家庭裁判所への寄託
寄託とは、お金や物を他人に預けて、その使い道や処理を任せることを意味します。
つまり、家庭裁判所が支払義務者から養育費を預かることで、支払義務者に代わって養育費の支払いを行ってくれる制度です。
この制度を利用すれば、当事者同士の交信を避けることができます。
家庭裁判所の寄託命令・調停
家庭裁判所への寄託は、調停や審判によって義務づけることも可能です。
強制執行
強制執行とは、支払義務者の財産を差し押さえることで、強制的に養育費の支払いを受ける手続きです。
不動産や給料を差し押さえることで半強制的に支払いが行われるため、非常に強力かつ確実な制度です。
ただし、支払義務者に与える影響が決して小さいものではないため、利用に際しては慎重に検討しなければなりません。
利用するには、養育費請求調停の調停調書等にもとづき、地方裁判所に強制執行の申し立てを行う必要があります。
養育費のケーススタディ
養育費で考えられるケースをまとめましたので、参考にされてください。
相手方が再婚した場合
離婚した夫婦の片方が再婚した場合でも、親としての扶養の義務はなくなりません。
したがって、養育費の支払いは継続して行う必要があります。
調停調書に記載された内容は法的拘束力を伴います。
相手方が再婚したからといって勝手に養育費の支払いを止めると、強制執行により給料の差し押さえなどがなされる可能性もあります。


相手方が失業した場合
相手方が失業し、借金の返済と生活費でギリギリの生活を送っているため、養育費の支払いが滞っているという事態も決して珍しいことではありません。
しかしながら、子どもを扶養する義務よりも借金の返済を優先できるという根拠はどこにもありません。
これまでに行われた裁判例では、たとえ収入がなく、多額の借金を抱えている場合でも、自らの生活が維持され、借金の返済が行われている以上は、子どもの扶養義務を怠る根拠はないとしています。
したがって、借金の返済よりも養育費の支払いの方が優先されて行われるべきなのです。
「離婚とお金」について
離婚にともなうお金の問題について解説します!- ●慰謝料
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