離婚後に養育費を請求できる?【離婚弁護士が事例で解説】
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- 離婚した後も養育費を請求できますか?
- 養育費はいくらが相場ですか?
- 相手が養育費を支払ってくれません・・・
当法律事務所の離婚事件チームには、このような離婚後の養育費に関するご相談が多く寄せられています。
離婚後の養育費の請求の可否とポイントについて、経験豊富な弁護士が実際の相談事例をもとに徹底解説いたします。
離婚後の養育費が問題となった事例
2年前に、5歳と3歳の息子を連れて離婚しました。
早く別れたくてあせって離婚したため、子ども達の養育費について元夫と取り決めず、いままで支払ってもらったことはありません。
しかし、これから子ども達が大きくなるにつれて費用がかかることを考えると、私の収入だけでは不安です。
いまさらですが、元夫に養育費を支払ってもらうことはできるのでしょうか。
解 説
離婚後も、父母は未成熟子に対して扶養義務を負います(民法877条1項)。
養育費とは、子どもの衣食住の費用、教育費、医療費などというような、子どもが独立して社会人として自立するまでに要する費用のことをいうため、子どもと離れて暮らす親が、養育費を支払うことは、子どもに対する扶養義務(生活保持義務)です。
まず子どもと一緒に暮らし監護している親が、他方の親に対し、養育費についての協議をすることとなります。
しかし、これが調わない場合や協議をすることができない場合、子の監護に関する処分として、別居している親に対し、養育費請求の調停又は審判を申し立てることになります。
調停が調わず、養育費請求の審判申し立てをした場合、家庭裁判所が後見的にその具体的金額を監護について必要な事項の観点から定めることとなります。
ご質問によれば、離婚したのは2年前ということなので、支払われなかった期間の養育費も請求したいと思われるかもしれません。
この点について、過去の分の養育費の請求は、過去に遡って多額の負担を命じることが公平に反する場合もあるため、相当と認める範囲に限定したり、養育費を定める一切の事情の中に過去の養育費の不払いの事情も含めるとするのが判例の一般的な考え方です。
養育費はいつまで支払われるのかについては、現在の審判例では、原則、成年に達するまでとされています。
もっとも、協議や調停で定める場合には、お互いの話し合いによる合意によることになります。
たとえば、子どもの大学進学が予想される場合について、通常大学等の教育機関を卒業する年齢、すなわち22歳に達した後最初に到来する3月までというような終期になることもあります。
離婚後の養育費の問題点
遡って請求はできない
養育費は、請求の意思を相手方に通知したときから支払義務が発生すると考えられます。
したがって、離婚後、数年経過してから、養育費を求めた場合、もらっていないからと言っても、離婚時に遡って未払い分を請求することは難しいです。
このような事態にならないためにも、離婚が成立する前に、協議の段階で適切な額の養育費について、合意書を締結しておくことが重要です。
また、現在、養育費について合意書がない場合、一刻も早く、相手方に対して養育費を求める意思を通知しておくべきです。
裁判所の手続きは時間を要する
相手方が養育費を支払わないと、養育費の調停を申し立てる必要があります。
養育費の調停手続は、申立てから成立まで、通常半年以上を要すると思われます。
そのため、養育費をもらえる時期が遅くなってしまう可能性があります。
離婚後の養育費を請求するポイント
上記問題点を踏まえて、離婚した後の養育費のポイントを解説いたします。
ポイント1養育費を求める意思を明確にするコツ
上記のとおり、養育費は遡って請求することは難しいため、養育費の支払い義務者(通常は父親側)に対して、養育費を求める意思を通知しておくことが重要です。
法律上、養育費を求める意思の通知は、口頭でも構いません。
しかし、口頭での通知は、トラブルの可能性があるためお勧めはいたしません。
どのようなトラブルが想定されるのか、具体例で説明します。
具体例
母親Aさんが離婚後、父親Bさんに対して、「養育費を支払ってください。」と言ったとします。
これに対して、Bさんは「わかった。」と返答しました。
ところが、Bさんは何か月経っても、養育費を支払ってくれませんでした。
そこで、Aさんは、再度、「いつになったら払ってくれるの?」と連絡しました。
その際もBさんは、「ちゃんと払うから。」と返答しました。
結局、養育費を求めてから1年経っても、Bさんは支払ってくれませんでした。
そこで、Aさんは家裁に養育費の調停を申し立てました。
家裁において、Aさんは、1年前に遡って、未払い分の養育費を請求しました。
Aさんは、1年前から養育費の支払いを求めていたから当然の主張でしょう。
しかし、Bさんは、「養育費の支払いなど求められていない。」と反論したとします。
Aさんは、納得がいかず、調停が不成立となり、審判に移行しました。
この場合、家裁は、Bさんに1年前に遡って養育費の支払いを命ずるのではなく、Aさんが養育費の調停を申し立てたときの支払い義務を認める可能性が高いと思われます。
なぜ、このようなことになってしまうのか?
未払い養育費を求める事実においては、過去に養育費を請求したという事実を主張する側に、その事実を証明する責任があると考えられているからです。
そのため、養育費を請求する側は、裁判所で証明することが可能な資料を準備しておくべきです。
証明資料としては、実務上、内容証明郵便(配達証明付)、LINEやメールなどの文面(プリントアウトしたもの)、相手方との会話内容の録音データなどが提出される傾向です。
もっとも、具体的な内容しだいで、養育費の過去分の支払いが認められるか否かが代わってきますので、証拠となるか否かは専門家に相談されることをお勧めいたします。
ポイント2養育費調停を早く解決するコツ
養育費の支払い義務者が養育費を任意に支払ってくれない場合、家裁に養育費の調停を申立てます。
ところが、調停手続は、上記のとおり、長期間を要する可能性があります。
特に、特に意味もないのに、無駄な期日を何回も重ねていくと、解決までに1年を超えることもあります。
調停手続は、平日の昼間(午前か午後)に行われているため、会社員の方などは会社を休まなければなりません。
また、調停1回あたり、数時間を要することが多いため、相当なご負担になるかと思います。
このような養育費の調停手続を早く解決するコツは、早い段階(できるだけ1回目)から双方が養育費の適正額を算定するために必要な資料を提出しておくことです。
具体的には、源泉徴収票(確定申告を行っている方については確定申告書が望ましい)や所得証明書です。
これらの資料があれば、家裁において、適正額は算定可能ですので、早い段階から中身(適正額を受け入れることができるか)の検討が可能となります。
また、相手方が適正額について、受け入れる様子がなければ、早い段階で、「審判手続」へ移行してもらうよう調停委員会に上申することも効果的です。
審判手続は、裁判官(家事審判官)が養育費について決定してくれる手続です。
調停で平行線をたどるよりも早期に解決できる可能性があります。
なお、審判への移行を上申すると、裁判官の中には、適正額で応じるよう相手方を強く説得してくれる場合があります。
裁判官を目の前にして説得されると、応じてくれるようになるケースも見受けられるので、この場合、調停が早くまとまります。
養育費の相場
離婚後、養育費を請求するとき、「いくら請求したよいかわからない。」というご相談が多く寄せられています。
養育費は、双方の年収や子供の数・年齢で異なります。
ここでは、養育費の相場について、具体例をもとに解説します。
年収300万円の場合の養育費の相場
具体例
相手(元夫) 年収300万円
当方 年収0円
子供 2人(3歳と1歳)
上記の場合、算定表上(※)の養育費は、4万円から6万円(5万円程度)となります。
※算定表とは、養育費を簡易迅速の算定するための早見表のことをいいます。
年収600万円の場合の養育費の相場
具体例
相手(元夫) 年収600万円
当方 年収100万円
子供 2人(18歳と15歳)
上記の場合、算定表上(※)の養育費は、10万円から12万円(10万円程度)となります。
養育費のくわしい計算方法はこちらのページで詳しく解説しています。ぜひ御覧ください。
養育費を算定するときの注意点
上記の養育費の額は、双方の収入が正確に把握できている場合を前提としています。
実際の相談では、相手の正確な収入がわからない場合が多くあります。
サラリーマンの場合でも、手取りと年収は異なります。
年収を調べるためには源泉徴収票や確定申告書などを精査する必要があります。
また、自営業者の場合、複雑な計算となるので、離婚専門の弁護士でないと、養育費の算定基礎とすべき正確な収入を判断するのは難しいと思われます。
さらに、子供が私立学校に通っている、病気等のため支出がある、などの場合、特別支出と言って、通常の養育費に加算される可能性があります。
したがって、養育費の適正額については、専門家に相談されることをおすすめします。
相手が養育費を払わない場合
離婚後、養育費を請求するケースでは、相手が素直に養育費を支払ってくれないことが多々あります。
今まで支払っていなかったのに、突然養育費を請求され、支払う必要性について、疑問を抱く方が多いからです。
このような場合、養育費を支払う法律上の義務があることを説明し、理解してもらう必要があります。
離婚を専門とする弁護士であれば、このような交渉を行ってくれる可能性があるので、相談されるとよいと思います。
また、相手が説得に応じない場合は、養育費の調停を申立てる必要があります。
養育費の調停は、上記のとおり、長期化する可能性があるため、できるだけ負担が少なくなるように解決することがポイントとなります。
まとめ
離婚後の養育費について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
養育費は、子供を育てていくための大切な制度です。
適切な額を算出し、相手に確実に支払ってもらえるようにするためには、離婚問題に精通した弁護士の助言を得ることがポイントとなります。
当法律事務所の離婚事件チームは、離婚問題に精通した弁護士のみで構成される専門チームです。
離婚後の養育費でお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。
ご相談の流れはこちらからどうぞ