離婚後、子供に会わない父親。面会交流をさせる方法は?

面会交流を父親(非監護親)が拒否する場合、まずは面会交流を実施すべきか・すべきでないかを考え、実施すべき場合は、実施に向けて父親と話し合いをすることになります。
話し合いにおいては、父親が自ら「面会交流をするべきだ」と思えるようになるように、働きかけることがポイントとなります。
ここでは、面会交流を父親が拒否する場合の対処法などについて解説していきます。
父親が面会交流に消極的で困っている母親(監護親)の方は、ぜひ参考になさってください。
面会交流とは
面会交流とは、非監護親(子どもと離れて暮らしている親)が子どもと会うなどして交流をすることをいいます。
面会交流は、父母の一方のみが子どもを監護(一緒に暮らして世話をすること)をしている場合に実施されます。
そのため、父母が離婚した場合のみならず、離婚前に別居をしている場合にも問題となります。
面会交流を父親は拒否できる?
面会交流が問題となる場面では、父親が面会交流を希望して実施を求め、母親が実施を拒否して求めに応じないという構図になるケースが圧倒的に多いです。
しかし、まれではありますが、父親が面会交流を希望せず、母親の方から父親に対して面会交流の実施を求めるケースもあります。
このような場合に、父親は面会交流を拒否することができるのでしょうか。
父親には面会交流をする「権利」があると考えれば、面会交流をするか・しないかは、父親が自由に決められることであるとも言えそうです。
しかし、現在の裁判実務では、面会交流は子どものために行われるべきものと考えられており、少なくとも父親が自由に実施するか・しないかを決められる事項であるとはされていません。
そして、法律では、面会交流については、父母が協議(話し合い)で定め、協議ができない場合・調わないときは、裁判所が決めるものとされています(民法766条1項2項)。
その際には、子どもの利益を最も優先して考慮しなければならないとされています。
そのため、父親が面会交流をしたくないと言っている場合でも、裁判所が子どもの利益の観点から面会交流を実施するべきであると判断する可能性はあります。
裁判所が実施するべきと判断した場合は、「面会交流を実施せよ」との命令が出されることとなり、父親は、命令に反して面会交流を拒否することはできなくなります。
もっとも、実際のところは、父親が面会交流をしたくないと言っている場合は、「面会交流を実施せよ」との命令を出される可能性は高くはありません。
父親が面会交流をしたくないと言っている状況では、面会交流を強行しても、子どもの利益に適うような面会交流とはならないことが多いからです。
以上まとめると、面会交流が子どものためになる以上は、父親はこれを拒否することはできません。
しかし、父親が面会交流をしたくないと言っている場合は、面会交流を実施しても子どものためにならないことが多いため、実施しないとの結論になるケースが多いです。
面会交流を父親が拒否しているときの選択肢
面会交流なしで子どもを育てる
面会交流を実施しないというのも一つの選択肢です。
面会交流を実施しないと、子どもの成長にマイナスの影響が及ぶのではないかと心配されている方もいらっしゃると思います。
たしかに、面会交流は、一般的には子どもの健全な成長にとって有益なものと考えられています。
面会交流によって、子どもは離れて暮らす親からも愛されていることを感じ、両親の離婚による悲しみや喪失感が和らいだり、安心感や自己肯定感を持つことができると言われています。
しかし、父親が面会交流を拒否している場合は、無理に面会交流を実施しても、子どもが父親から愛されていることを感じる機会とはならないかもしれません。
子どもが父親の拒絶的な態度に触れて傷つき、かえって健全な成長にとって悪影響となる場合もあります。
このような恐れがある場合には、面会交流をしないことを選択することも十分に考えられます。
しばらく様子を見る
別居、離婚、再婚、新しい子どもの誕生又は連れ子との養子縁組など、家族関係や生活環境が大きく変わる出来事があったときは、しばらくは心の整理がつかず、面会交流に積極的になれないこともあります。
このような場合は、急いで面会交流を実施しようとせず、しばらく様子を見ることも一つの方法です。
時間をおいて、新しい生活に慣れ、気持ちも落ち着いてくることで、面会交流について冷静に、前向きに考えることができるようになる場合もあります。
そのようなタイミングで面会交流を始める方が、無理して今すぐに実施するよりも、子どもにとっても有意義な面会交流を実現できるものと考えられます。
面会交流を実施させる
面会交流を実施させるというのも選択肢となります。
実施させるといっても、実施を強制するのは難しいため、父親が自ら「子どもに会いたい」とか「子どもに会うべきだ」と思えるように、働きかけをしていくことになります。
例えば、父親が本心では子どもに会いたいと思っているものの、「子どもに会うと悪影響を及ぼしてしまうかもしれない」などと思い込んで、面会交流を拒否しているとします。
このような場合は、父親に「面会交流をすることが子どものためになる」と思ってもらえるように、子どもが会いたがっていることなどを伝えて思い込みをただしたり、面会交流の重要性を説明して理解を促したりすることになるでしょう。
父親に面会交流をさせたいときの対処法
面会交流を拒否する理由を確認する
まずは、父親と話し合い、なぜ父親が面会交流を拒否するのかを確認するようにしましょう。
理由は様々ですが、よくある理由と、理由を踏まえた対処法としては、次のようなものが考えられます。
面会交流をしない方が子どものためになると思っている
父親が面会交流をしない方が子どものためになると思い込んでいることがあります。
例えば、離婚の原因(DV、モラハラ、浮気、浪費など)が父親側にある場合、父親が責任を感じて、「自分は今後は子どもの人生に関わらない方が良い」とか、「子どもに会うと子どもに悪影響を与えてしまうかもしれない」と思い込んでいることがあります。
このような場合は、誤解を解くとともに、面会交流の重要性を説明し、理解してもらうようにするとよいでしょう。
そうして、父親が子どもに会うことが子どものためになることに気づくことができれば、面会交流の実施に向けて調整していくことができるようになります。
父親が母親に関わりたくないと思っている
子どもには会いたいけれども、母親には関わりたくないため、面会交流を拒否しているというケースもあります。
このような場合は、父親の不安を解消したり、父母が顔を合わせずに実施できる方法を提案することで、面会交流ができるようになることがあります。
具体的には、次のような方策が考えられます。
- ① 面会交流のルールを決める
- ② 第三者に協力してもらう
- ③ 第三者機関を利用する
母親によるDVやモラハラが原因で離婚に至ったようなケースでは、父親が母親と会うことに不安や恐怖を抱いていることがあります。
このような場合は、子どもの受け渡しや付き添いの際のルールをきちんと取り決め、安心して面会交流に臨めるような体制を整えるとよいでしょう。
例えば、父親が子どもの受渡し時に母親と顔を合わせた際に、母親から非難されたり、罵倒されたりしないか心配している場合は、「受渡し時には面会交流に関係する事以外は言わない」といった内容のルールを決めるなどの対処が考えられます。
父親が母親と直接顔を合わせられない場合は、親族等(子どもの祖父母など)の第三者に、母親の代わりに子どもの受け渡しや付き添いをしてもらうことを検討するとよいでしょう。
第三者機関とは、当事者のみで面会交流を実施することが難しい場合に、当事者の間に入って連絡調整や子どもの受け渡し、付き添いなどのサポートをしてくれる機関のことをいいます。
親族等の第三者に協力をお願いできない場合は、第三者機関の利用も考えられます。
ただし、利用条件があり、費用も掛かりますので、利用が適するかどうかはケース・バイ・ケースです。
利用を検討する場合は、事前に面会交流の問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
父親が再婚相手などに気を遣っている
父親が再婚している場合は、再婚相手や、再婚相手の連れ子又は再婚相手との間に生まれた子どもに気を遣って、面会交流を拒否していることもあります。
このような場合も、まずは面会交流の重要性を説明し、理解してもらう必要があります。
また、再婚しても子どもとの親子関係はなくならず、子どもを扶養する義務(養育費を支払う義務)からも免れないことや、将来は相続の問題も生じることも再認識してもらうようにするのもよいでしょう。
間接交流を提案する
父親が直接子どもと会うことに消極的な場合は、間接交流から始めることを提案するとよいでしょう。
間接交流とは、直接会うのではなく、電話や手紙でのやり取りなどの間接的な方法で交流をすることをいいます。
子どもと直接会うことには抵抗があっても、間接交流であれば受け入れられるという場合もあります。
間接交流であっても、子どもにとっては、父親から愛されていることを感じる重要な機会となります。
また、直接交流をするための準備としても役立ちます。
間接交流の方法としては、主に次のようなものがあります。
- ① LINE電話などのオンラインツールを利用し、画面越しに顔を合わせて会話する
- ② 電話で会話をする
- ③ 手紙を交換する、メールやLINE等でメッセージのやり取りをする
- ④ 母親から父親に子どもの写真等を見せる(原本・コピーやデータを送付する)
① は直接交流に近い方法です。
① のような方法で実施できれば、直接交流への抵抗感も薄れ、直接交流に移行しやすくなるでしょう。
いきなり顔を合わせるのは難しいという場合は、②のような音声のみのやり取りから始めます。
それも難しいという場合は、③のようなメッセージのやり取りから始めるとよいでしょう。
父親が非常に消極的な場合や、子どもが幼くてメッセージのやり取りが難しい場合は、④のような一方向的な方法から始めることになります。
弁護士に間に入ってもらう
相手と話し合う際には、弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。
本人同士の話し合いでは、問題点を明確にしたり、冷静に話し合ったりするのが難しい場合も多いです。
父親は、面会交流を拒否する理由について、母親に対して直接は言いにくいという場合もあるでしょう。
また、母親は、父親の言い分を冷静に受け止めることが難しく、怒りや不満をぶつけてしまいがちになることもあります。
このような場合は、弁護士にサポートを依頼し、代理人として父親と話し合ってもらうようにするとよいでしょう。
弁護士が間に入ることで、父親の言い分の整理や、解決するべき問題点の明確化がしやすくなり、どうしたら面会交流を実現できるか、冷静に考えられるようになります。
また、専門家である弁護士が面会交流の重要性などを説明し、説得することで、父親の理解も得られやすくなるため、父親に面会交流をするべきだと思ってもらいやすくなるでしょう。
面会交流の調停を申し立てる
協議(裁判外での話し合い)での解決が難しい場合は、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てることを検討します。
調停とは、裁判所において、調停委員会を仲介に話し合いを行い、合意による解決を目指す手続きです。
協議を経ずに調停を申し立てることも可能ですが、調停は解決までに時間や労力がかかりますので、できるだけ協議での解決を目指し、調停の申立ては次善の策とすることをおすすめします。
調停で話し合っても合意ができない場合は、調停の手続きは終了し、その後は自動的に「審判」という手続きに移行します。
面会交流調停についての詳しい解説は、こちらのページをご覧ください。
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面会交流の審判
面会交流の審判とは、裁判官が一切の事情を考慮して一定の判断を下す手続きです。
調停で話し合いがまとまらなくても、審判になれば決着をつけることができます。
もっとも、父親が面会交流を拒否している事案では、審判で「面会交流を実施せよ」との命令が出る可能性は高くはないと考えられます。
父親が拒否している場合は、面会交流を実施させても、子どもの利益にならないことが多いからです。
そのため、できるだけ話し合い(協議や調停)での解決を目指すべきでしょう。
実施の合意ができない場合であっても、話し合いであれば、例えば、「半年後に再度実施について協議する」と取り決めておくなど、将来的に面会交流を実現するための下準備ならばできることもあります。
審判での解決が最善とは限りませんので、弁護士に相談するなどして、状況に合った対応をするようにしましょう。
まとめ
以上、父親が面会交流を拒否しているときの対処法などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
父親が面会交流を拒否している場合の選択肢としては、面会交流をしない、しばらく様子を見る、面会交流を実施させることなどが考えられます。
面会交流を実施させたい場合は、父親の誤解を解いたり、父親に面会交流の重要性を理解してもらったりして、面会交流に応じてもらうように働きかけることがポイントとなります。
どのように対処していくべきかは、状況により異なりますので、まずは面会交流に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめいたします。
当事務所には、離婚問題を専門的に扱う弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、面会交流の問題にお困りの方を強力にサポートしています。
LINEなどによるオンライン相談にも対応しており、全国対応が可能です。
面会交流の問題にお困りの方は、お気軽にご相談ください。
