年金分割を留保して先に離婚をすることは可能ですか?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

年金分割を留保した上で離婚を先行させることは可能です。

喜ぶ老人のイメージイラスト仕事の転勤等の何らかの理由により結婚を急いでいるために、年金分割のための情報通知書を取得することが間に合わない場合や、夫婦共働きで年金分割の結果が自分に利益のあることなのか否かが未確認の場合等に、離婚の成立を先行させて、年金分割の手続きを離婚後に行いたいと思われる方もいらっしゃると思います。

 

そのような場合、例えば、離婚時には、離婚時年金分割について年金分割請求をすること及び按分割合(合意分割の場合は上限2分の1)だけについて合意しておくことも可能ですし、離婚時年金分割については別途協議の上定めるとの合意をすることも可能です。

書類を作成する男性のイラストまた、年金分割請求をしたら自分に不利益になる可能性(対象期間標準報酬総額が減額される可能性)がある場合で、相手方が年金分割について何も主張してこないときには、年金分割をしたらどうなるのかを年金事務所で確認をした上で、年金分割が自分にとって利益的である場合にのみ相手方に年金分割の話合いを持ちかけるということも考えられます。

なお、年金分割について留保しておきながら、当事者間に債権債務がない旨を確認する精算条項を定めてしまった場合には、その後、年金分割請求をすることができなくなるのではないかと思われるかもしれません。

しかしながら、年金分割請求権は公法上の請求権であり、離婚をする当事者間の債権債務関係ではないため、精算条項を定めていたとしても、年金分割事件の申立てや厚生労働大臣に対する請求である年金分割請求は可能です。

以上のように、離婚時に年金分割の定めをせずに、後日、年金分割請求をすることは可能です。

もっとも、年金分割請求は、原則として離婚をした日の翌日から起算して2年以内に行わなければならないとされているので、離婚後に年金分割の請求をする場合には、請求期限を徒過しないよう十分に注意をしてください。

 

 


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