ローン残高が自動車の価値より高い場合、財産分与はどうなる?
他にめぼしい財産がない場合、財産分与請求権は生じません。
このことについて詳しく解説します。
財産分与について
財産分与は、夫婦が同居期間中に築いた財産を折半することをいいます。
プラスの財産を分けることはもちろんですが、マイナスの財産も夫婦で分けるというのは、確かに間違いではありません。
たとえば、預金が夫婦合わせて100万円あり、一方で教育ローンを借りていてその借金が60万円残っていた、という場合を考えます。
このとき、分け合うべき夫婦の総財産は計算上40万円(100万円 – 60万円)ということになりますので、各取り分は20万円(40万円 ÷ 2)となります。
マイナス財産の方が多かった場合
では、マイナス財産の方が多かった場合どうなるのでしょうか。
例えば、夫が契約者の自動車ローンの残高が100万円、夫名義の自動車の時価が50万円の場合、マイナスとなるので財産分与請求権は生じません。
財産分与という制度は、「夫婦で築いた財産を折半する」というものですが、プラスとして存在しないものまで積極的に分けることまではしません。
自動車の名義、ローンの名義がいずれも夫名義となっているケースが多いのは、一般的に夫の方が収入が高いため、言い換えれば妻の方が収入が低いためです。
一般的な妻の立場からすると、婚姻期間中は婚姻費用といって、生活費を夫に請求する権利があります。
しかし、離婚が成立すると、夫は妻に対して自分の生活費を請求することができなくなります。
当然、働いて得られる収入もすぐに増えるわけではありません。
そして、そもそも自動車のローンの支払いは夫の収入があてにされていたわけですから、離婚になるや否や、経済力のない妻に大きなローンの負担を負わせることを認めてしまえば、離婚後の妻の生活はたちまち困窮してしまい、立ち行かなくなります。
そのため、夫婦の総財産がマイナスとなる場合、経済力のない妻にマイナスの負担を負わせるような判断は法的にも認められていません。
ローンの残った自動車を取得したい場合は?
上記の考え方は、総財産がマイナスであり、かつ妻が自動車の取得を希望していない場合の話です。
ローンの残った自動車を取得したいのであれば、妻であってもローンを負担する必要があります。
この場合、自動車ローンの処理が問題となります。
妻の方が収入が低く、ローンを払えるだけの資力がなかった場合、ローン自体の名義を妻に変更できない場合がほとんどです。
そのため、離婚後もローンの請求は引き続き夫にくるという状況が避けられないことがあります。
このような場合、財産分与全体の中で、妻の取分を残ローン金額分減らす、あるいは、養育費と実質的に相殺する形で、養育費の金額を減らしておく、といった調整を図る場合もあります。
まとめ
離婚後も夫が自動車を使用し続けるのであれば、自動車ローンについても夫が責任をもって支払うという処理が妥当でしょう。
夫も妻も自動車を必要としていないという場合、当該自動車を売却するかどうかを名義人(多くは夫)に決めてもらうこととなります。
仮に売却したとしても、前述のとおり、経済力のない妻に負担がくることはありませんので、引き続き夫がローンを負担することになります。