保険を相手から引き継ぎたいのですが、可能でしょうか?
相手が応じてくれれば可能です。
他方で、相手方が名義変更に応じない場合は、基準時(多くは別居時)における解約返戻金相当額を数字として計上し、清算するほかありません。
保険の名義変更について
例えば、学資保険の契約者が夫となっている場合、離婚に際し、契約者を妻に変更したいというご相談をよく受けます。
これは、学資保険を途中で解約するよりも、そのまま継続して支払って行き、子どもの教育資金にしたいと考える方が多くいるからです。
相手と保険契約の契約者の変更の合意をし、保険会社に所定の手続きを取ることで引き継ぐことは可能です。
ただ、後々トラブルとならないよう、協議離婚の合意書の中で保険契約をきちんと特定し、合意内容を明確にしておくべきでしょう。
例えば、
1夫は、妻に対し、別紙目録記載の学資保険の保険受取人を、夫から長男A(平成●年●月●日生)に変更する手続きを約束する。」
2妻は、必要があるときは、名義変更手続きに協力する。
目録
保険会社 A生命保険株式会社
証券番号 ●●―●●●
保険の種類 学資保険
契約者 夫
といった条項を記載することが考えられます。
※実際の合意書には、「夫」、「妻」といった表現ではなく、「甲」、「乙」といった表現が使われます。
名義変更における留意点
名義変更に当たり留意しておかなければならないのは、変更後の保険料は、上記の例では妻が支払っていかなければならないということです。
離婚後の収支を考えた場合、保険料の支払が難しいということであれば、名義変更しても保険自体を維持できないということになりかねません。
そのため、名義変更を求めるに際しては、ご自身の収入と支出のバランスをあらかじめ検討しておく必要があります。
もしくは、名義はそのままにしておくとして、満期金の支払時期になったとき、この満期金を子どもの預金口座に入金するということで調整を図る場合もあります。
あるいは、保険金の受取人をお子さんに指定しておくよう変更するという方法もあります。
例えば、「夫は、妻に対し、別紙目録記載の学資保険の保険受取人を、夫から長男A(平成●年●月●日生)に変更する手続きを約束する。」
といった条項を記載することが考えられます。
これは、名義人(多くは夫)が、中途解約などをしないことが前提となりますので、信頼関係がどの程度維持されているかにもよるところです。
なお、保険の価値は基準時(多くは別居時)の解約返戻金額として評価するのが通常です。
そして、この解約返戻金の原資が夫婦で築いたもの(たとえば一方配偶者の給与)であれば、保険は財産分与の対象です。
これが学資保険の場合、「子どものために積み立てていたのだから、子どものものだ!」とお考えの方がいらっしゃいますが、法的にはそうではありません。
学資保険は、子が自ら築いた財産ではありませんので、原則通り、夫婦の共有財産として清算対象となります。