他の事件の裁判記録を使って不貞の慰謝料請求できますか?
他の事件の裁判記録は、以下で解説する「他の事件の裁判記録を入手する方法」記載の方法により入手することができます。
これを証拠として慰謝料請求を行うことが可能です。
背景事情
配偶者が浮気をしているのではないかとの疑いを持った場合、配偶者の携帯電話等を調べることにより不貞行為が発覚することはありますが、用心深い配偶者が相手の場合には携帯電話等を調べたとしても不貞の証拠が出てこないことが多いのが実情です。
とはいえ、自分で浮気調査をすることは容易ではありません。
そのため、調査会社に配偶者の不貞調査を依頼し、調査会社に不貞の証拠収集を依頼する方は少なくありませんが、その調査費用は場合によっては高額になることがあります。
しかし、いわゆるダブル不倫の場合、不貞相手の配偶者が既に調査会社に不貞調査を依頼する等して不貞の証拠を獲得している可能性があります。
そこで、不貞相手の配偶者が既に不貞の証拠を獲得している場合には、その証拠を使って慰謝料請求を行うことが考えられます。
なお、何が不貞の証拠として有用であるかについては、こちらをご覧ください。
他の事件の裁判記録を入手する方法
まずは、証拠を持っている人物に対し任意に資料を提供してもらうことが考えられます。
いわゆるダブル不倫の事案において、証拠を持っている不貞相手の配偶者が不貞相手と離婚する場合は任意に資料を提供してもらえる可能性があります。
もっとも、不貞を行った二人の資力が乏しい場合には慰謝料の回収可能性を高める観点から資料を提供してもらえないことは考えられます。
一方、証拠を持っている不貞相手の配偶者が不貞相手と離婚しない場合、不貞相手とその配偶者は今後も継続して家計を一にするため資料を任意に提供してもらえる可能性は低くなります。
次に、不貞相手の配偶者がすでに不貞の慰謝料請求の訴訟を提起している場合や不貞相手の夫婦間で離婚調停が行われている場合等には裁判記録を閲覧謄写することが考えられます。
慰謝料請求訴訟の訴訟記録は誰でも閲覧可能ですが(民事訴訟法91条1項)、謄写するためには利害関係を疎明する必要があります(民事訴訟法91条3項)。
一方、離婚調停のような家事事件の記録については閲覧謄写のどちらにも利害関係の疎明が必要です(家事事件手続法254条1項)。
利害関係の有無についての判断は裁判所の判断になりますが、閲覧謄写を求める事件と自身がどのような関係にあるかをきちんと整理しておき、裁判所へ説明することが重要です。
なお、裁判記録を閲覧謄写のためには事件番号を特定する必要がありますが、当事者名をいずれも特定できる場合には裁判所が事件番号を調査してくれることがあります。
実際に慰謝料請求訴訟を提起した後については、文書送付嘱託(民事訴訟法226条)又は訴訟記録取寄せの申請により他の事件の裁判記録を証拠として裁判上利用することが出来ます。
慰謝料請求訴訟を提起した裁判所と別の裁判所に他の事件が継続している場合には文書送付嘱託の申立てを行い、同じ裁判所に他の事件が継続している場合には訴訟記録取寄せの申請を行うことになります。
慰謝料請求をお考えの場合は、こちらもご覧ください。