年金分割の情報通知書から、秘匿中の現住所が漏れることがある?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

年金分割の手続きについて相談です

私は、夫のDV・モラハラのため、別居して、現住所を夫に秘匿しています。

一刻も早く離婚の手続きをしたいです。

ただ、年金分割のための情報通知書から、秘匿している現住所が漏れることがあると聞き、とても不安です。

このような場合、どのようにして年金分割の手続きをしたらいいのでしょうか?

 

離婚調停や年金分割調停などの手続きの際に、現住所が記載されている年金分割のための情報通知書をそのまま家庭裁判所に提出すると、通知書の写し(コピー)が相手方に送付されるため、現住所を知られてしまいます。

そのため、相手方に現住所を知られたくない場合には、次に説明するとおり、

①現住所が記載されていない通知書を裁判所に提出する

②現住所をマスキングした通知書を裁判所に提出する

といった対策を取ることが絶対に不可欠です。

 

 

年金分割のための情報通知書から、現住所が漏れてしまう危険がある!

年金分割を行うためには、まず、年金分割のための情報通知書(以下、単に「通知書」といいます。)を取得することが必要になります。

この通知書は、各地の年金事務所に請求すると自宅に送ってもらえるのですが、通常、送られてきた通知書には、送付先であるあなたの現住所が記載されています。

そして、年金分割を求めるため、離婚調停や年金分割調停を申し立てる場合には、家庭裁判所に通知書を提出する必要がありますが、その後、相手方にも通知書の写しが送付されることになります。

したがって、裁判所に提出した通知書にあなたの現住所が記載されていると、現住所が相手に知られてしまうことになるわけです。

そうすると、DVやモラハラをしてくる相手から避難して別居をしている場合など、相手方に現住所を秘匿している場合、現住所が漏れてしまっては、いうまでもなく死活問題になります。

そこで、年金分割の手続きのために通知書を取得したり提出するにあたっては、次のとおりの対策を取ることが絶対に不可欠です。

 

 

年金分割のための情報通知書から、相手方に現住所が漏れることを防ぐためには?

対策①現住所の記載がない通知書を取得して裁判所に提出する。

まず、通知書を取得する際に、年金事務所において、そもそも現住所の記載がない通知書を取得することができます。

これは、年金事務所に通知書の送付を請求する際、担当者に、住所を秘匿しているという事情を説明していただき、通知書には現住所を記載せず、同居時の旧住所を記載するように求めたり、 そもそも住所の記載がない通知書を送付するように求めることで、現住所の記載がない通知書を取得することができます。

なお、離婚調停や年金分割調停において年金分割を求める場合、家庭裁判所には、調停申立書と一緒に、通知書を添付して提出する必要があります(もちろん、調停申立書の提出と同時でなくても、後から通知書を提出することは可能です。)。

現住所の記載のない通知書が取得できた場合、裁判所には、年金事務所から送付されてきた通知書の原本を提出する必要があります。

その際、今後の手続きで必要になる場合がありますので、自分の手元には通知書の写しを残しておきましょう。

 

対策②通知書の原住所記載部分をマスキングしたコピーを裁判所に提出する。

もしかすると、すでにあなたは、現住所の記載がある通知書を取得しているかもしれません。

この場合、再度、現住所の記載がない通知書を取得することはできます。

しかし、年金事務所に通知書の送付を依頼してから、通知書が送られてくるまでの期間として、数週間から1か月かかることが通常ですから、急いでいる場合には、これを待っている時間的余裕がない可能性もあります。

そこで、現住所の記載がある通知書を取得している場合、通知書の原住所記載部分をマスキングしたコピーを裁判所に提出する、という方法をとることもできます。

ただし、通知書の原本に直接黒塗りをしてしまうと、後の手続きでその原本が使えなくなってしまう可能性があります。

そこで、具体的方法としては、通知書の原本をコピーし、そのコピーの現住所記載部分が見えないようにしっかり黒塗りしたり、マスキングテープを張った上で、これをさらにコピーしたものを裁判所に提出するとよいでしょう。

この場合には、今後の手続きに必要となりますので、通知書の原本は自分の手元に保管しておきましょう。

▼年金分割に必要な書類について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

まとめ

このように、相手方に住所を秘匿している場合に年金分割の手続きを行うためには、通知書の取得から家庭裁判所の手続きに至るまで各段階で、思わぬところで相手方に住所が漏れる危険が潜んでいます。

漏れてしまえば、再度の引っ越しを余儀なくされるなど、多大な不利益を被ることになってしまいます。

そこで、このような危険からあなたの身を守るためには、上記にご説明したような、細かい専門的ノウハウが必要となってきます。

当事務所には、離婚や年金分割の手続きに詳しい弁護士が多数所属しておりますので、ご不安なことがあれば、何なりとお気軽にご相談ください。

▼ご相談の流れについてはこちらをご覧ください。

 

 


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