結婚前に購入していた自動車も財産分与の対象となるのでしょうか?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2019年実績)

弁護士の回答

結婚前に購入した自動車は基本的には財産分与の対象となりません。

結婚後もローンを支払っている場合は対象となる可能性があります。

 

財産分与とは

財産分与とは、夫婦が結婚している間に築いた財産を分ける制度です。

民法は、「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定しており、財産分与の根拠はこの条文となります(768条)。

財産分与が「結婚している間に築いた財産」を対象とする制度である以上、結婚前に購入したものは、財産分与の対象とはなりません。

このような財産分与の対象から外れる財産のことを、「特有財産」と呼びます。

特有財産とは

財産分与は、結婚後に築いた財産を分ける制度であり、結婚前に保有していた財産(預貯金や生命保険等)は対象から外れます。

また、親からの贈与や相続など、結婚生活とは無関係に取得した財産も対象から外れます。

このような財産分与の対象とならない財産を特有財産と言います。

財産分与について、詳しくはこちらのページで解説しています。

 

 

結婚前に購入した自動車はどうなる?

婚姻前に購入していた自動車は、夫婦の協力関係がない時期に取得した財産ですので、特有財産と考えられます。

したがって、基本的には財産分与の対象から外れます。

結婚後も自動車ローンを支払っている場合

自動車や不動産のような高額な物は、一括での購入ではなく、通常、分割払い(ローン)を組んで支払います。

ここで注意が必要なのが、結婚後もローンを支払っているような場合です。

例えば、婚姻前に300万円の自動車を購入し、その自動車ローンのうち100万円を支払った時点で婚姻し、その後残ローンの200万円を完済したとします。

このような場合、たしかに、自動車を取得したのは結婚前ですが、結婚後にローンを支払っていることになります。

ローンを支払っていなければ、200万円の預貯金ができたかもしれません。

そこで、このような場合、完全に特有財産としてしまっていいのか、争いとなることがあります。

法律上、このような場合の処理について、明記はされていません。

しかし、このような事案では、結婚後にローンで支払った部分については、財産分与の対象と認められる可能性が高いと思われます。

 

 

どのように計算すべきか?

それでは、結婚後に支払ったローン全額の200万円すべてを財産分与の対象とすべきでしょうか。女性

財産分与は、基準時(通常は別居時又は離婚時)に存在する財産を現時点において評価して、分けるという制度です。

自動車についても、その時価を評価する必要があります。

そして、その評価した価額から、特有財産部分を控除し、残りを財産分与の対象とするという解決方法が考えられます。

具体的な算出方法は次のとおりです。

具体例 結婚後も自動車ローンを支払っている場合

自動車の購入額:300万円
結婚前に支払った金額:100万円
結婚後に残ローンの200万円を完済

ステップ1 自動車の時価を査定する

現時点における自動車の時価を査定します。

自動車の時価の査定は、自動車販売会社に依頼するなどして査定書をもらうとよいでしょう。

ここでは、自動車の時価が150万円だったとします。

ステップ2 特有財産部分を算出する

特有財産部分については以下の計算式で算出すればよいでしょう。

計算式自動車の時価 / 自動車の取得価額 ☓ 結婚前に支払った額 


150万円 / 300万円 ☓ 100万円 = 50万円

 

 

ステップ3 時価から特有財産部分を控除して、財産分与の対象を算出します

計算式 自動車の時価 – 特有財産部分 = 財産分与の対象


150万円 − 50万円 = 100万円

以上から、この事案では、100万円が財産分与の対象となります。

他に、財産がなければ、この100万円を夫婦で分けるので、2分の1ルールにより、それぞれ50万円ずつ受け取るということになります。

 

 

オーバーローンの場合

自動車の場合、使用年数とともに、時価が大幅に減少していきます。

そのため、ローンが多く残っているケースでは、オーバーローン(時価よりもローン残額が上回っていること)の状態にある可能性があります。

このような場合、財産分与はどうなるのでしょうか。

オーバーローンのケースでは、そもそも財産分与の対象財産が存在しないこととなります。

具体例 自動車ローンの残額が200万円で、自動車の時価が100万円の場合


100万円(時価)− 200万円(ローン残額)= −100万円

自動車ローンの残額が200万円で、自動車の時価が100万円だったとすると、自動車の価値はありません。

財産分与は、プラスの財産がある場合にこれを分けるという制度です。

したがって、他に資産がない場合は、相手に財産分与を求めることができません。

 

 

ローンが残っている場合

債権者への返済義務は、財産分与とは別問題です。

そのため、自動車ローンが残っている場合、オーバーローンの場合でも、オーバーローンの場合ではなくても(時価の方がローンよりも上の場合)、当該ローンについては債権者に返済義務があります。

この返済義務を負っているのは、ローンを組んだ方(借り入れた方)となります。

したがって、ローンを組んだ方と結婚した方は、いくら配偶者であったとしても返済義務はありません。

 

まとめ弁護士以上、結婚前に購入した自動車と財産分与の問題について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

結婚前に自動車を取得していれば、基本的には特有財産として、財産分与の対象から外れます。

しかし、結婚後もローンを支払っていればその部分については財産分与の対象となり得ます。

その場合の計算方法はやや複雑ですので、詳しくは専門家にご相談された上で進めていかれることをお勧めいたします。

また、自動車の財産分与にあたっては、時価を適切に査定することが不可欠です。

上記の事例では時価を150万円と記載していましたが、適正な時価そのものについて争いとなることが多く、これを適切に算出することが重要なポイントとなります。

自動車の問題について、また財産分与一般について、気になることがあれば、いつでも当事務所まで相談にいらしてください。

ご相談の流れはこちらをご覧ください。

 

 


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執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
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