内縁でも、浮気されたら不貞慰謝料をとれますか?【弁護士が解説】
内縁の配偶者に浮気をされてしまいました。
この場合でも、浮気相手や内縁の配偶者から、不貞慰謝料をとることはできるのでしょうか?
内縁の夫婦であっても、法律上の夫婦の場合と同じように、不貞行為があった場合には、不貞相手や内縁の配偶者に対して不貞慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料を払ってもらうためには、
① 内縁関係にあることが証明できるかどうか
② 不貞行為があったことが証明できるかどうか
などに注意する必要があり、これらに関する証拠が集まってから、浮気相手に請求をかけることが重要です。
内縁の配偶者にも、不貞慰謝料請求権は認められる!
「内縁」とは、男女が婚姻の意思をもって実際に夫婦生活を営んでいるものの、婚姻届を提出していないために法律上の夫婦とは認められない関係をいい、「事実婚」と呼ぶこともあります。
そして、内縁の夫婦であっても、法律上の夫婦の場合と同じように、不貞行為があった場合には、不貞相手や内縁の配偶者に対して慰謝料を請求できることが、判例上認められています。
最高裁判所は、「内縁の当事者でない者であつても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させたものが、不法行為者として損害賠償の責任を負うべきことは当然」(最判昭和38年2月1日)として、内縁の配偶者にも、法律上の夫婦の場合と同様に不貞慰謝料請求権を認めました。
不貞慰謝料を請求するための具体的方法は?
このように、内縁の夫婦であっても不貞慰謝料を請求することができますが、その具体的な方法としては、以下の3つがあります。
- ① 裁判外において、相手方と示談交渉を行う
- ② 家庭裁判所などに対し、内縁関係調整調停や慰謝料請求調停、民事調停を申し立てる
- ③ 地方裁判所などに対し、慰謝料の支払いを求めて訴訟を提起する
以下、くわしく説明します。
弁護士が代理人として示談交渉を行う場合の具体的な流れとしては、まず相手方に対して、内容証明郵便で慰謝料を請求する通知書を送付し、その後、弁護士と相手方との間で、書面や電話、対面の協議などを通じて慰謝料額について交渉を重ねます。
その後、合意が成立すれば示談書を作成して、これに基づいて慰謝料の支払いを受ける、という形になります。
しかし、調停は話し合いの手続きですので、示談交渉段階で不貞行為の有無や慰謝料の額について折り合いがつかなかった場合には、調停を申し立てたとしても解決する見込みはあまり高くありません。
したがって、示談交渉段階で決着がつかなかった場合には、調停の申し立ては行わず、判決によって強制的に決着をつけることができる訴訟手続に移行する場合がほとんどでしょう。
内縁関係を証明する方法は?
内縁関係の成立要件
内縁関係は、①当事者間の婚姻の意思、②夫婦共同生活の存在、の2つの要件が満たされる場合に成立します。
ただし、特に①の要件は、当事者の内心の意思であって、直接証明をすることが難しいです。
そのため、婚姻の意思が外形的に現れているといえる様々な客観的事情を証明して、この要件が満たされていることを裁判所などに認めてもらう必要があります。
内縁関係を証明するために必要な客観的事情
そこで、以下、内縁関係を証明するために必要な客観的事情として代表的なものを紹介します。
同居期間は、例えば、二人の住民票の住所が、特定の期間において同一住所であることなどから証明することができます。
ただし、法律上、明確に何年以上の同居という基準が存在するわけではなく、一つの考慮要素に過ぎませんので、他の事情も合わせて証明する必要のある場合が多いでしょう。
これは、式場との契約関係書類などで、証明することができます。
関連して、冠婚葬祭の儀式に2人で招かれて参加したことなども、夫婦として社会的に認識されていることを示す事情となりえます。
これらの事情は、裁判となった場合には、夫婦として認識していた旨を記した陳述書をご家族などに書いてもらったり、証言してもらうことによって証明することが考えられます。
また、携帯電話について家族割引契約をしていることも、内縁関係を証明するために役立ちます。
これは、住民異動の届出の際や世帯変更届を提出する際に、続柄に上記の記載をすることによって登録することができます。
このような場合、そのことが分かる給与明細などが、内縁関係を証明するための証拠となります。
不貞行為を証明する方法は?
また、不貞相手に慰謝料を請求するためには、当然のことながら、不貞行為があったことを証明するための証拠が必要です。
そして、内縁の場合も、不貞行為の証明に関しては、法律婚における不貞慰謝料請求の場合と同様のものとなります。
不貞慰謝料請求全般について、詳しくはこちらをご覧ください。
具体的には、興信所の調査結果報告書や、携帯電話等のメール、SNSにおけるやり取り、不貞行為を認める発言やその期間・頻度などについての会話を録音した音声データなどが有力な証拠となります。
注意しなければいけないのは、十分な証拠を収集しない段階で相手に不貞行為の有無を問いただしてしまうと、相手としては、不貞行為を否定した上で、証拠になりそうなものを処分するきっかけを与えてしまいます。
そうすると、相手が不貞行為を否定し続けて訴訟になった場合、不貞行為を証明する証拠が足りないために敗訴してしまう危険が格段に高まります。
そこで、十分な証拠を収集した上ではじめて相手に請求をかけることが重要となります。
まとめ
このように、不貞慰謝料請求を行う場合には、①内縁関係の証明と不貞行為の証明に関して、様々な証拠を収集する必要があったり、②請求の具体的手続きとしても、不貞相手との示談交渉や、調停の申立て、訴訟の提起など、様々な手段を用いる必要がある場合もあります。
そうすると、どのような証拠を集めるべきか、どのように交渉や手続きを進めるべきかなどの点で、専門的な知識と能力を有する弁護士の関与がなくては、慰謝料の支払いにまでたどり着くことが難しい場合もあります。
当事務所には、不貞慰謝料請求に関する知識と経験の豊富な弁護士が多数所属しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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