離婚後にもらえる各種手当やお得な制度【弁護士が解説】
離婚後の手当の重要性
離婚してシングルマザー(母子家庭)になった場合、経済的に苦しい状況に陥ってしまうことが考えられます。
経済的に苦しい方を守る、救うために国や自治体では、母子家庭や父子家庭が受けられる公的援助を設けています。
公的援助には、一定の金銭を支給する制度や税制の優遇措置があり、家計を助けてくれるため、特にシングルマザーにとっては重要となります。
上手に活用し、苦しい生活から脱却しましょう。
公的援助は、市区町村によって異なり、また、政策によって流動的なものもありますので、詳細は市区町村役場の窓口に問い合わせをして下さい。
ここでは目安として記載させて頂きます(2019年7月1日現在)。
児童扶養手当(母子手当)
児童扶養手当とは
児童扶養手当とは、一人親の児童のために、地方自治体から支給される手当です。
かつては、父子家庭は受給できませんでしたが、男女差別ではないかとの指摘があり、法改正がなされ、父子家庭であっても、要件を満たせば受給できるようになりました。
手当の名前も、母親のみを連想する「母子手当」から「児童扶養手当」に変更されました。
支給対象となるのは、以下の要件のいずれかに該当する場合です。
- ①父母が離婚した
- ②父または母から引き続き1年以上遺棄されている
- ③父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた
- ④父または母が死亡した
- ⑤父または母が政令で定める程度の障害の状態にある(国民年金の障害等級1級程度)
- ⑥父または母の生死が明らかでない
- ⑦父が政令により引き続き1年以上拘禁(犯罪を犯して身柄を拘束)されている
- ⑧母が婚姻によらないで懐胎した
- ⑨母が婚姻によらないで懐胎した児童に該当するかどうかわからない
離婚に関して重要なのは①から③です。
特に、③の保護命令については、平成24年8月の法改正で新たに認められるようになったものであり、DV被害者にとっては重要です。
児童扶養手当の支給額は?
児童扶養手当の額は、法令で定まっていますが、子供の数によって異なります。
また、所得に応じて、受給額が異なり、高額所得者になると、まったく受給できません。
例えば、2019年8月振り込み分からの受給額は、下表のとおりです。
子供の数 | 全部受給できる場合 | 一部受給できる場合 |
---|---|---|
1人 | 月額4万2910円 | 月額1万0120円〜4万2900円 |
2人 | 月額5万3050円 | 月額1万5190円〜5万3050円 |
3人目以降 | 1人につき月額6080円加算 | 月額3040円〜6070円を加算 |
上記はあくまで目安です。
支給額は物価等により毎年見直しがあります。
所得制限限度額については扶養親族の数によって異なり、また控除される所得等も個々に異なりますので、詳しくはお住まいの市町村役場の窓口までお問い合わせください。
児童扶養手当はいつ支給される?
児童扶養手当の支払いは、奇数月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)に2か月分ずつ、年6回支払われます。
(例)9月支払いの手当は、7月~8月の2か月分の手当が支給
なお、児童扶養手当は従来、4か月分ずつ年に3回行われていましたが、法改正が行われ、2019年11月分からは上記のとおりとなりました。
児童扶養手当はいつまで受け取れる?
対象となる子供が18歳に到達し、最初の3月31日(年度末)までとなります。
ただし、子供が特別児童扶養手当を受給できる程度の障害にある場合、20歳に到達するまで児童扶養手当の対象となります。
児童手当(子ども手当)
児童手当とは
児童手当は、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資するために支給される手当です。
2010年に創設されたときは「子ども手当」という名前でしたが、その後政権が交代してから児童手当となりました。
児童手当はいくらもらえる
児童手当の受給額は下表のとおりです。
所得制限未満の場合 | 所得制限額以上の場合※ | ||
---|---|---|---|
児童の年齢 | 児童1人あたりの月額 | 児童一人当たり 月額5000円 |
|
3歳未満 | 1万5000円 | ||
3歳~小学生 | 第1子、第2子 | 1万円 | |
第3子以降 | 1万5000円 | ||
中学生 | 1万円 |
※所得制限額
所得制限額については、下表のとおりです。
扶養親族等の数 | 所得制限限度額 | 収入額の目安(控除前) |
---|---|---|
0人 | 622万円 | 833.3万円 |
1人 | 660万円 | 875.6万円 |
2人 | 698万円 | 917.8万円 |
3人 | 736万円 | 960万円 |
4人 | 774万円 | 1002.1万円 |
5人 | 812万円 | 1042.1万円 |
所得については、世帯の合算所得ではなく、父母それぞれの単独の所得で判定します。
なお、離婚の事案では所得制限額以上となるケースはそれほど多くありません。
児童手当はいつ支給される
原則として、毎年6月、10月、2月の10日に、それぞれの前月分までの手当が支給されます。
(例)6月の支給日には、2~5月分の手当が支給されます。
児童手当はいつまで受け取れる?
中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に対して支給されます。
児童手当は別居したとき、父母のどちらが受け取れる?
児童手当は、1人親に支給される児童扶養手当と異なり、離婚前であっても支給されます。
そのため、離婚を決意して別居したとき、父母のいずれが受け取れるかという相談が多く寄せられています。
児童手当は上記のとおり、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資するために支給される手当です。
この制度の趣旨からすれば、実際に子供を監護している親が受け取るべきです。
したがって、例えば、母親が子供を連れて別居した場合、その母親が児童手当を受け取るべきです。
なお、当事務所の離婚事件チームは、児童手当について、離婚前でも受給権者を変更したり、相手方に児童手当を請求するためのサポートを行っています。
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当とは
これは身体や精神に障害のある児童について、福祉の向上のために支給される手当です。
上記の「児童扶養手当」とは別の目的に基づいて支給されるものですので、併給が可能です。
特別児童扶養手当が支給される条件
- 1級(重度)=療育手帳A・身体障害者手帳1、2級
- 2級(中度)=療育手帳B・身体障害者手帳3級または4級の一部
- 所得が一定未満であること。
- 児童が、児童福祉施設等(通園施設は除く)に入所しているときは受給できません。
※手帳がなくても該当する場合があります。
※所得要件は厳しくなく、ほとんどの世帯では受給可能ですが、計算が複雑なため最寄りの役場へお問い合わせください。
特別児童扶養手当はいくらもらえる?
- 1級(重度)=該当児童1人につき5万2200円
- 2級(中度)=該当児童1人につき3万4770円
※2019年7月1日現在の状況です。
特別児童扶養手当はいつ受け取れる?
手当の支払いは、4月、8月及び11月の3期に、それぞれの前月までの分が支払われます(11月は当月までの分)。
特別手当はいつまで受け取れる?
就学援助費
就学援助費とは
これは、経済的理由によって、就学困難と認められる児童等に対して、市町村が学用品費、給食費、通学費などを援助する制度です。
援助の条件や内容等は自治体によって若干異なるため、くわしくは最寄りの自治体にお問い合わせください。
なお、例として、北九州市の場合を紹介します。
北九州市の就学援助費の要件
次のいずれかに該当すること。
- ①「児童扶養手当」を受給している。
- ②生活保護が廃止又は停止になった方
- ③市民税が非課税の方
- ④国民年金の掛金の減免を受けている方
- ⑤国民健康保険料の減免を受けている方
- ⑥その他経済的に困っている方
上記のとおり、離婚事案では、多くの世帯で、離婚後に児童扶養手当を受給することとなります。
したがって、児童扶養手当と合わせて、就学援助費を受給すれば、子育てがしやすくなると思われます。
就学援助費の支給額は?
例えば、北九州市の場合、小学校1年生の場合は次の内容となります。
- 給食費:実費
- 学用品費:1万3100円
- 入学準備金:5万0600円
北九州市の就学援助費についてくわしくはこちらをごらんください。
母子・父子・寡婦福祉資金
20歳未満の子供を扶養している母子家庭に対し、事業開始、就学、就職、医療介護などに必要な資金の貸し付けを行う制度です。
利子と償還(返済)期間は、貸付金の種類によって異なりますが、無利子等の低金利で資金を借りられ、3~20年で返済を行います。
なお、北九州市の場合は、寡婦(配偶者のない女子で、かつて母子家庭の母であった者)に対しても貸付けを行っています。
詳しくは、こちらをどうぞ。
離婚後の税の減免
母子・父子家庭の場合、申告により所得税や自動車税の減免措置を受けることができます。
病気などの理由により、日常生活に支障をきたしている場合に利用できます。 また、所得に応じて派遣費用が異なります。
まとめ
離婚後に受給・活用できる様々な手当や制度について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか?
離婚すると、これまでの経済状況が一変するため、不安を抱えて離婚に踏み出せない方は多くいらっしゃいます。
このホームページの情報が離婚に悩む方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
デイライト法律事務所の離婚事件チームは、離婚問題に注力した弁護士のみで構成されています。
また、離婚事件チームには、税理士、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家も在籍しており、離婚相談者の方の離婚後の生活をきめ細やかにサポートしています。
離婚で悩んでいる方は、1人で悩まずに、お気軽にご相談ください。
ご相談の流れはこちらからどうぞ