生活が苦しく、養育費を減額してもらいたいのですが可能ですか?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

Q:8年前に妻が子どもを連れて出て行き、調停で離婚しました。
そのとき決まった養育費を現在まで払い続けていたのですが、昨年、同じ離婚経験のある女性と再婚し、その女性の連れ子と養子縁組しました。
しかし、勤務先の経営状態が悪化したことで給料が下がり、新しい家族の生活を維持しながら今後も養育費を払い続けることに限界を感じています。
せめて養育費を減額することはできないでしょうか。

養育費を取り決めた際に当事者が予見することができなかった「事情の変更」が後に至って生じ、取り決めた内容が実情に合わなくなった場合には、養育費の減額請求が認められることがあります。

楽しい家族

養育費は子に対する扶養義務であるところ、民法880条によれば「扶養の程度について協議又は審判があった後事情に変更が生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取り消しをすることができる」と規定しています。

この規定は、離婚後のこの養育費の減額についてもあてはまり、養育費を定めた後に「事情の変更」があったときには養育費の額を変更することが認められます。

養育費の増減額が認められるためには、基準とされた事情の変更が生じ、従来の協議や調停又は審判の内容が実情に適合せず、不合理・不公平となった場合です。

事情の変更がある場合とは

「事情の変更」がある場合とは、次のような扶養義務の順序・程度方法等に影響する一切の事情の変更が考慮されます。

 

① 当事者の個別的事情
・収入の変化等生活状況の変化
・健康状態
・再婚や養子縁組等の身分関係の変動
② 物価変動や貨幣価値の変動などの一般的な社会経済事情の変化

 

もっとも、これらの事情が生じても、養育費を取り決めるための協議等のときから予測されて前提とされていた場合や、当然予見できた事情がその後現実化したような場合には、原則として事情変更があったとは認められません。

 

また、養育費の支払義務は、当事者の死亡、離縁その他の基本的扶養義務を基礎づける身分関係の消滅事由があった場合はともかく、単にその後、客観的に「事情の変更」にあたるような事由が生じたとしても、当然に養育費が減額されるわけではありません。

すでに公正証書、調停又は審判で具体的な養育費の金額が定められている場合、その条項は、変更させる旨の調停が成立し、あるいは審判が確定したときに初めて変更されることになります。

養育費の問題点

養育費の減額に関する事案では共通して見られる傾向があります。

以下、紹介しますので、ご参考にされてください。

減額の可否を判断するのが難しい

養育費養育費は、基本的には双方の年収で判断されます。

また、簡易迅速に診断するためには算定という早見表もあります。

しかし、例外的に、双方の資産、別居の際の状況等を考慮して判断されることもあります。

また、養育費の減額の場面では、「事情の変更」という要件で判断されることとなりますが、具体的にどのような場合にこの要件を満たすのか、離婚を専門とする弁護士でなければ判断が難しいと考えられます。

 

相手方と冷静に話ができない

夫婦不仲なイメージ離婚した男女ですので、相手方に対して不信感でいっぱいなのが通常です。

特に、養育費の減額については、相手方からすると、「約束違反」、「子供のことを考えていない」などと悪感情だけが生じて、冷静な話し合いができない傾向が見られます。

 

口頭での約束はトラブルになりやすい

仮に、相手方が減額に応じてくれたとしても安心できません。

減額した内容について、示談書などに明記しておくべきです。

養育費の減額では、口約束だけの場合、後日、言った言わないの争いになることが多いからです。

養育費の減額に関してはこちらもごらんください。

 

 

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