養育費を一括払いでもらうことはできますか?
当事者の合意により養育費を一括前払いとすることも可能と考えられます。
養育費とは?
養育費は、未成熟の子を監護養育していくために、その日常生活において日々必要となる衣食住の費用、教育費、医療費、適度の娯楽等のため、子どもを監護しない親から監護する親に対して支払われる費用です。
日々必要となる子の日常生活の費用の支払という養育費の性質上、毎月○万円、というような定期金給付の方法によることが望ましいとされています。
養育費について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
養育費の一括請求の可否
過去の審判例のなかには、「養育費は、その定期金としての本質上、毎月ごとに具体的な養育費支払請求権が発生するものである(東京家審平18.6.29)」としているものがあり、審判手続きで養育費の支払方法が定められる場合は子どもを監護しない親に対する養育費一括前払請求が認められるのは難しいと思われます。
しかし、合意に基づき、養育費を一括前払いの方法で支払うと取り決めることは可能です。
つまり、協議で養育費の取り決めをする場合、子どもを監護する親と監護しない親が将来の養育費の一括前払いをすることに合意したときは、その合意は有効となります。
調停でも、双方が一括前払いによる方法を希望し、一括前払いが相当だといえる事情がある場合には、希望に沿った内容で調停をさせることがあります。
一括前払いしてもらった後に養育費の再請求は認められる?
では、養育費の支払方法を一括前払いとする合意がされて離婚した場合において、その後、支払われた養育費では費用が不足し、さらに請求したいという場合は、養育費の再請求が認められるのでしょうか。
この点、一括前払いの合意がされた場合であっても、子どもの監護養育は長期間にわたることも多いため、合意時に予測できなかった事情の変更が生じ、当初の合意内容を維持することが不合理・不公平といえる場合には、養育費を再請求することができます。
もっとも、養育費の一括前払いを受領した子どもを監護する親は、養育費を計画的に使用して子どもを養育する義務があります。
このことから、子どもを監護する親が、養育費を使い尽くすことが容易に予測可能であったのに、子どもを私立学校に通わせるなどしたことにより養育費を使い尽くしたような場合には、養育費の再請求は認められません。
養育費を一括払いにする場合のポイント
①養育費の適正額を把握する
養育費の前払いが可能であっても、毎月の養育費の適正額を押さえておくことはとても重要です。
例えば、月額10万円の養育費を3年分前払いするとき、一括では360万円となります。
10万円 × 36ヶ月 = 360万円
もし、本来の適正額が月額20万円だった場合、一括の場合の適正額は720万円となります。
20万円 × 36ヶ月 = 720万円
このように養育費の適正額を押さえておかないと損をしてしまう可能性があるため注意が必要です。
養育費の適正額については、相手の提示額を鵜呑みにしてはいけません。
離婚問題に詳しい弁護士に相談するなどして適正額を把握し、納得した上で、合意をするようにしましょう。
②書面での合意をする
養育費は、支払う側も、もらう側も、口頭で済ませるのではなく、書面で合意することをお勧めいたします。
なぜならば、口頭での合意は、次のようなリスクが考えられるからです。
書面には、公正証書や離婚協議書などがありますが、離婚専門の弁護士にチェックしてもらったほうが良いでしょう。
例えば、支払う側の場合、養育費については一括の前払いであって、今後の追加の養育費の支払いは一切応じない、などの記載があれば、将来の追加請求のトラブルを防止できる可能性を高めると思われます。
また、もらう側の場合、合意の当時、明確ではなかったような事情(例えば、子供の病気や大学進学等)が発生した場合、養育費について別途協議する、などの取り決めがあれば、多少は安心感があるかと思われます。
合意に記載する最適な内容は、状況によって異なります。
そのため、ネット上の情報は参考程度にとどめて、専門家にご相談された上で作成することを強くお勧めいたします。
まとめ以上、養育費の一括前払いについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
養育費は、当事者間が了承するのであれば、基本的に一括払いも認められます。
しかし、養育費の一括払いの前提として、本来の養育費の適正額を押えるようにしましょう。
また、トラブル防止のために、合意内容を書面化しておくべきです。
そのため、養育費でお悩みの方は、ぜひ一度、離婚専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。
当法律事務所の離婚事件チームは、養育費の諸問題に精通した弁護士のみで構成される専門チームです。
離婚問題でお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。
ご相談の流れはこちらからどうぞ。