養育費を支払ってもらえないとき、強制執行することはできますか?
Q:元夫とは調停で離婚し、子どもの親権者を私とし、元夫が毎月養育費を支払うことになりました。
しかし、半年前から養育費の支払がありません。
元夫から養育費をもらうために、強制執行等の法的手続きをとることはできませんか。
調停や審判で定められた養育費を支払ってもらえない場合、家庭裁判所から履行勧告をしてもらうよう申し立てる方法があります。
また、給与債権等を差し押さえるというような方法で、強制執行をすることも可能です。
子どものための養育費について調停や審判で定めたにもかかわらず、養育費を支払う義務のある親がこれを払わない場合、子どもを監護する親が家庭裁判所に、養育費の支払義務のある親に対して調停等で定められた義務を履行するよう勧告してもらう申し出をすることができます(口頭や電話でも構いません。また、費用もかかりません)。
この申し出がされると、家庭裁判所は、養育費の支払がされているかの状況を調査して、養育費を支払うべき親に対し、その義務をきちんと果たしなさいという意味で、履行を勧告します。
そして、子どもを監護する親と養育費を支払う親との間で、養育費として一定額の金銭を支払う旨の調停の成立や審判がされたにもかかわらず、この支払がされない場合には、申し立てにより強制執行をすることができます。
この申し立ては家庭裁判所でなく、地方裁判所の強制執行担当係に行うことになります。
金銭債権は原則、支払期限が到来していないと強制執行することはできません。
しかし、養育費等にかかる定期金債権(毎月○万円の支払いというような定期的な債権)で、確定期限の定めのあるもの(「例:毎月28日を支払期日とする」というように支払日が具体的な日にちとなっていたりして特定されているもの)については、支払いを求める側の強制執行の手続的な負担を軽減して、その履行(支払い)を確保するため、特例として、定期金債権の一部について不履行があるときは、期限が到来していない将来支払期日が到来する定期金(養育費)についても、給料その他の継続的給付にかかる債権を差し押さえることができます(民執法151の2)。
※この特例は、婚姻費用にも適用されます。
養育費の強制執行の問題点
養育費の強制執行事案では共通して見られる問題点があります。
以下、紹介しますので、ご参考にされてください。
適正が養育費の額を算定できていない
養育費は、夫婦双方の基礎収入をベースに適正額を算定します。
例えば、相手方の年収が500万円の場合と600万円の場合は養育費の適正額が異なります。
ところが、実際のケースに置いて、相手方の年収を正確に把握している方は極めて少数です。
収入を調べるためには、前提として、源泉徴収票や確定申告書などの資料が必要となります。
また、確定申告をされている方の場合、不動産所得、配当所得、副収入がある、などの事情が想定されますが、そのようなケースでは、基礎収入を判断するのがとても難しく、素人判断はやめるべきです。
さらに、養育費については、特別支出を検討する必要があります。
特別支出とは、私立学校へ通わせている、高額な医療費がかかっている、などのケースにおいて、その分を考慮して、通常の養育費に加算する制度です。
養育費の適正額については、多くの離婚事案を扱っている専門家に相談することをお勧めします。
養育費の額について、よりくわしく知りたい方はこちらをごらんください。
終期について誤解している
養育費については、終期は20歳と決めつけている方々がいます。
しかし、養育費は子どもを扶養義務に基づくものですので、終期をいつにするかは個別の案件によって異なる可能性があります。
そのため、終期についても、離婚専門の弁護士にご相談されることをお勧めします。
養育費の強制執行は負担が大きい
養育費を強制執行するためには、その前提として債務名義(調停調書や公正証書等)が必要です。
また、強制執行の申立てを裁判所に対して行います。
強制執行の申立ては、手続は複雑で書類の作成も難解です。
そのため、通常、素人の方が自分で申立てを行うことは少なく、弁護士にご依頼されることが多いです。
弁護士にご依頼されると、強制執行手続のために相当な弁護士費用が必要となります。
したがって、本当に強制執行まで必要か否かの見極めがポイントとなります。