子どもが私立中学に進学した場合、養育費を増額できる?


数年前に夫との調停離婚が成立しました。
子どもの親権は私がもち、離婚後は私が一人で子どもを育てています。
元夫は、離婚後、私に養育費を支払っています。
この春から子どもは私立中学校に通うことが決まりました。しかし、いま払ってもらっている養育費では、子どもを私立中学校に通わせるのは非常に厳しいです。
そこで、元夫に養育費の増額を頼みたいと思っていますが、可能でしょうか?
養育費額を取り決める際、原則として、子供が私立学校に在学していることは考慮されます。
養育費額の決定方法
養育費は、養育費を支払うべき義務者及び養育費を請求する権利者の収入を基礎に算定表を参照した上具体的な金額を算出するのが一般的です。
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算定表上、学費は全く考慮されていないわけではなく、公立学校教育費相当額(0歳~14歳の子供については年間13万4217円、15歳~19歳の子供については年間33万3844円)がすでに考慮されています。
そのため、私立学校の学費のうち上記金額を超える部分についてのみが養育費の算定上別途考慮されることになります。
加算される場合

保育園の保育料や私立幼稚園、私立小学校、私立中学校の学費のうち、年間13万4217円(月額1万1185円)を超える部分について、権利者及び義務者がその収入(又は基礎収入)に応じ按分して分担することになり、義務者が分担すべき部分が養育費に加算されます。
具体的な計算方法として、権利者の年収が400万円、義務者の年収が600万円、13歳の子供が一人いて私立中学校の学費が年間63万4217円かかっている場合について、養育費がいくら加算されるかを検討してみましょう。
具体例 権利者の年収が400万円、義務者の年収が600万円、13歳の子の学費(私立中学校)年間63万4217円の場合
権利者:年収 400万円
義務者:年収 600万円
子ども:学費 年間63万4217円(私立中学校 13歳)
権利者の基礎収入:152万円(= 400万円 × 0.38)
義務者の基礎収入:222万円(= 600万円 × 0.37)
学費のうち算定表上考慮されていない金額:50万円(= 63万4217円 - 13万4217円 )
【義務者が負担すべき金額】
34万2342円(≒ 50万円 × 152/222 )
月額加算額:2万8528円(≒ 34万2342円 ÷ 12 )

私立高校の学費等のうち、年間33万3844円(月額2万7820円)を超える部分について、権利者及び義務者がその収入(又は基礎収入)に応じ按分して分担することになり、義務者が分担すべき部分が養育費に加算されます。
具体的な計算方法として、権利者の年収が400万円、義務者の年収が600万円、15歳の子供が一人いて私立中学校の学費が年間133万3844円かかっている場合の養育費の加算額は以下の計算のとおりです。
具体例 権利者の年収が400万円、義務者の年収が600万円、15歳の子の学費(私立中学校)年間133万3844円の場合
権利者:年収 400万円
義務者:年収 600万円
子ども:学費 年間133万3844円(私立中学校 15歳)
権利者の基礎収入:152万円(= 400万円 × 0.38 )
義務者の基礎収入:222万円(= 600万円 × 0.37 )
学費のうち算定表上考慮されていない金額:100万円(= 133万3844円 - 33万3844円 )
【義務者が負担すべき金額】
68万4684円(≒ 100万円 × 152/222 )
月額加算額:5万7057円(= 68万4684円 ÷ 12 )
加算されない場合
算定表は、公立学校に在学する子供がいる世帯の平均収入に占める学費の割合により生活費指数を算出しているため、養育費を支払うべき義務者の年収が平均収入を上回る場合には公立学校教育費相当額以上の学費が既に考慮されているといえます。
そのため、義務者の年収が平均収入を大きく上回る場合には、子供が私立学校に在学していたとしても養育費が加算されない可能性もありますのでご注意ください。
養育費を一度取り決めた後に養育費の額を増額するには、事情の変更があったといえなければなりません。養育費を取り決める前にすでに子供が私立学校に在学している場合には、事情の変更があったとはいえないため、事後的に養育費加算の主張をしたとしても養育費の増額請求は認められないでしょう。
そのため、養育費の加算の主張は、養育費を最初に取り決める際にきちんと行っておく必要があります。
養育費の増減額については詳しくはこちらをご覧ください。

