親権を行使できなくなるケースはありますか?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

親権を行使できなくなる場合があります。

 

法律上、未成年の子は親権に服しています。
両親が婚姻中であれば両親の親権に、両親が離婚しているなどの事情があればいずれかの親の親権に服しています。

しかし、親であれば常に親権を行使できるわけではありません。
親権者としてふさわしくないなどの一定の事情の下では、親権者の親権が制限されることがあります。

親権が制限されるケースには、次のようなものがあります。

 

親権の喪失


親権者による虐待又は悪意の遺棄があるときその他親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき
は、親権喪失の審判により親権喪失となることがあります。
これによると、親権者に虐待などの明らかに親権者として不適格である事情がある場合はもちろんのこと、重い病気で親権を行うことが困難な場合など、
親権者に落ち度がない場合であっても親権が喪失する可能性があります。

 

親権の停止

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親権の行使が困難又は不適当であるため子の利益が害されるとしても、期間を限定して親権を制限すれば足りる場合
は、
裁判所の決定により親権の喪失でなく、親権を停止させることが可能です。

親権の喪失が非常に重い決定であり、親子関係の修復も困難になる可能性もあることから、
親権を喪失させなくとも停止させれば足りる場合には、この手続により親権が停止されます。

管理権の喪失

親権者の管理権の行使が困難又は不適当であるために、子の利益が害されるとき、裁判所の決定により管理権を喪失させることが可能です。
たとえば、子どもの面倒を見て教育することに問題はなくても、子の財産を不当に減らすなどその財産管理能力に問題がある場合は、親権を喪失、停止させるまでの必要はありません。
そこで、限定的に管理権のみ喪失させることが認められています。

利益相反行為

子と親の利害が対立する状況では、親が子の利益を損なわせて自らの利益を得る危険があり、親が親権を適切に行使することが期待できません。
この事態を防ぐために、子と親権者である親の利益が相反する行為については、親権の内容の1つである親権者の代理権が制限されます。

 

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このように、親権者であっても、子に対する親権が常に認められているわけではありません。

親権者としての適格性が疑われる場合や適切に親権を行使することが期待できない場合には、親権を喪失、停止させることで、子の利益を守ることが可能です。

親権者の親権について疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、親権について詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。


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