妻が再婚したので、養育費は支払わなくてよいですか?

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。
養育費について質問です。

私は数年前に妻と離婚しました。妻との間には2人の子どもがおり、親権は妻がもつことになりました。私は妻に対し、月額5万円の養育費を支払うことを約束しています。

今年になり、妻が再婚したことが分かりました。

妻の生活は再婚によりかなり余裕のあるものになったと思います。それでも私は養育費を支払わなければならないでしょうか。

 

 

 

弁護士の回答

子どもと元妻の再婚相手が養子縁組していた場合は、原則として養育費を支払う必要はなくなります。

一方、養子縁組をしていなかった場合は、原則として養育費を支払う必要があります。

 

 

養子縁組をしていた場合

楽しい家族養育費の権利者(元妻)が再婚し、監護する未成年者(子ども)が再婚相手と養子縁組した場合、通常は、再婚相手の扶養義務が優先されます。

しかし、例外として養親が無資力だったり、その他の理由で十分に扶養できないときは、実親(元夫)が扶養義務を負担することになります。

養子縁組した子どもの扶養義務は再婚相手にあり、子どもを扶養するだけの収入や資力があれば、基本的に、元夫に対して養育費の分担を求めることができません。

 

 

養子縁組をしていなかった場合

家族権利者(元妻)の再婚相手と未成年者(子ども)が養子縁組をしていない場合、再婚相手は扶養義務を負っていません。

また、再婚相手が扶養義務を負っていない以上、義務者(養育費を負担する側)も、相手が収入のある者と再婚することを期待しても、子どもに対する法的な立場に変化はありません。

そうすると、元妻の再婚は、原則的には、養育費負担義務に影響を与えないということになります。

しかし、義務者(元夫)と再婚相手との間に経済的な格差があり、子どもが、事実上、再婚相手による扶養を受けており、元夫の負担を求める必要性がほとんどない場合などに、公平の観点などから、義務者(元夫)の負担義務を軽減することも考えられます。

このような場合の養育費の算出方法として、権利者(元妻)が再婚相手から受ける生活費部分を権利者(元妻)の収入として扱うという判断がされた審判例があります。

判例 養子縁組をしていなくても再婚相手からの生活費を収入として扱われた裁判例

申立人(権利者)が未成年者2人の養育費の増額を求めた事例です。

相手方(義務者)は養育費を支払うとの合意をしていましたが、申立人が再婚し、未成年者とともに再婚相手と同居するようになりました。

しかし、未成年者と再婚相手は養子縁組をしていませんでした。


審判では、
「申立人の現夫には未成年者らを扶養する義務はないとしても、申立人の現夫と申立人との間には、夫婦としての相互扶養義務があり、申立人は未成年者らの母としての扶養義務があり、これらはいずれも生活保持義務(中略)であるべきものと解されている。したがって、少なくとも申立人の現夫の収入から申立人に対する生活費としての相応の所得移転(所得分配)があるものとみなし、これを申立人の実収入に加算した上で、相手方の収入と合わせ、これをもとに、その他の諸事情を考慮した上、相手方の支払うべき未成年者らの養育費の額を算定するのが相当」であると判断されました。抗告審でも、この判断が維持されました。

【抗告審:大阪高決平成20年8月20日】

なお、養育費の減額をお考えの場合は、詳しくはこちらからどうぞ。

 

 

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