養育費が高額で、慰謝料が支払えません【弁護士が事例で解説】
私の不貞により、妻との離婚が決まりました。
妻との間には、子どもが2人おり、妻が親権を持つことになりました。
私は子どもの養育費として、適正額である月額10万円を支払う予定です。
養育費とは別に、妻からは不貞の慰謝料を請求されています。
しかし、私には養育費を支払うのが精いっぱいで、慰謝料を支払う余裕はありません。
そこで、養育費の支払いを理由に慰謝料の支払いを拒むことはできませんか。
法的には養育費の支払いを理由に、慰謝料の支払いを拒むことはできません。
しかし、相手との交渉しだいで柔軟な解決の可能性があります。
養育費とは
養育費とは、お子さんが原則として成人するまでの、生活全般にかかる費用のことをいいます。
子どもの生活に必要な費用として、食費、衣服費、教育費、交際費、病院代等が考えられます。
これは、あなたが離婚後も、お子さんの父であることから当然に支払う義務が発生する費用です。
養育費の額については、法律は、監護に要する費用としてまず協議で定め、協議が整わないとき、または協議できないときは家庭裁判所で定める旨規定しています(民法771条)。
したがって、本来、養育費の額は、法律上、「この額でなければならない」という決まりはありません。
父母双方が協議で合意さえすれば、「いくらでもいい」というのが答えです。
しかし、通常、親権者(権利者側)は将来に対する不安などから、養育費をたくさん受け取りたいと考えます。
ケースによっては、到底、非親権者(義務者側)が支払うことが不可能な法外な額を要求してくる相手もいます。
そのため、協議で話し合うにしても、一定の目安があった方が便利です。
この目安となるのは、家庭裁判所がつくった養育費算定表です。
養育費の算定方法など、詳しくはこちらのページで解説しています。
不倫の慰謝料とは
慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金をいいます。
民法では、身体、自由、生命、名誉などを侵害する不法行為や債務不履行について請求できるとされています(民法710条)。
離婚問題では、パートナーの不貞行為や暴力行為が慰謝料を請求できる場合の典型です。
この事例においては、あなたが不貞という不法行為を働いたことを原因に支払いが認められる損害賠償金です。
不貞の慰謝料は、あなたと妻との間で生じる責任であり、子どもの今後の生活維持とは無関係に認められるものです。
なお、慰謝料の相場については、こちらのページを御覧ください。
養育費の支払いを理由に慰謝料を減額できる?
上記のとおり、養育費と慰謝料は、法的な性質が全く異なる費用であり、片方の支払いを理由に他方の支払いを拒むことのできる関係にはありません。
あなたの慰謝料を支払う義務は、養育費を支払う義務をとは全く別に、法的に存在し続けることになります。
交渉しだいでは減額などの可能性も
もっとも、いずれかを適正額より高い金額で合意したために、他方が支払えなくなるという事態を招くのでは本末転倒です。
両者は法的には無関係ですが、長期的な支払いを続けるためにも、毎月の支払額は現実的に可能な金額で設定する必要があります。
そこで、妻との話合いにより、慰謝料の額を相場よりも低く支払うという内容で合意することも考えられます。
また、慰謝料の一括払いが難しい場合が想定されます。
このような場合、慰謝料を毎月の分割払いにしてもらうように提案してみるという方法も考えられます。
妻側が応じてくれれば、養育費に加えて支払う毎月の慰謝料の金額を、あなたが支払い可能な金額とする、という解決も考えられます。
離婚に際して支払う費用は、養育費や慰謝料のほか、財産分与など様々ありますが、いずれにしても毎月可能な支払額を想定して合意を結ぶ必要があります。
養育費や慰謝料のポイント
POINT①適正額を押える
この事案のように、養育費などを高額にしたために、慰謝料などの他の支払いが難しくなるという事案が見受けられます。
離婚する場合は、養育費だけでなく、他に、慰謝料、財産分与などの財産給付も考えなければなりません。
そして、これらについては、適正額があります。
早く離婚を成立させたいというお気持ちはわかりますが、相手の提示額を鵜呑みにせずに、「本来の適正額はどの程度なのか」を押えるようにしましょう。
養育費の適正額についてお知りになりたい方はこちらのページを御覧ください。
慰謝料の相場についてお知りになりたい方はこちらのページを御覧ください。
財産分与の相場についてお知りになりたい方はこちらのページを御覧ください。
POINT②法的に有効な合意書を作成する
合意内容は口約束ではなく、書面化しておくべきです。
口約束だと、後で言った言わないのトラブルになる可能性があるからです。
また、合意書については、素人の方が作成するのはお勧めしません。
素人の方だと、せっかく合意書を作成しても、不備があると法的に無効となってしまう恐れがあります。
そこで、専門家に作成してもらうか、少なくともご自身で作成する場合は専門家に見てもらったほうがよいでしょう。
まとめ以上、養育費と慰謝料の問題について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
養育費を高額にしたからといって、法律上は慰謝料の減額は認められません。
しかし、相手との交渉しだいでは、慰謝料を減額したり、分割払いにするなどの柔軟な解決が可能な場合も考えられます。
トラブルを避けるために、それぞれの適正額について把握することが重要です。そこで、専門の弁護士による適切なサポートを受けられることをお勧めいたします。
当法律事務所の離婚事件チームは、養育費や慰謝料の問題に精通した弁護士のみで構成される専門チームです。
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