不倫の慰謝料を請求しないという約束は可能ですか?【弁護士解説】
Aさんは、夫であるBさんがCさんと不倫をしたことについて、BさんとCさんそれぞれに対して100万円ずつの慰謝料請求をするつもりでした。
Bさんは、Cさんに迷惑をかけたくないという思いから、自分がAさんに対し200万円を支払うことで、AさんがCさんに何も請求しないようにできないかと考えています。
このような方法をとることは可能なのでしょうか。
不倫の慰謝料を請求しないという合意は可能です。
不倫の慰謝料とは
慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金をいいます。
民法では、身体、自由、生命、名誉などを侵害する不法行為や債務不履行について請求できるとされています(民法710条)。
離婚問題では、パートナーの不貞行為や暴力行為が慰謝料を請求できる場合の典型です。
慰謝料の相場については、こちらのページを御覧ください。
慰謝料を請求しないという合意
慰謝料を請求する相手については、被害者である妻Aさんが選択するものであり、加害者である夫Bさんの一方的な要求により、妻Aさんが加害者であるCさんに対して、慰謝料を請求できなくなるということはありません。
しかしながら、夫Bさんは妻Aさんとの間で、不貞相手であるCさんに対し慰謝料を請求しないという合意をすることは可能です。
妻Aさんご自身がそのような合意を了承するのであれば、これを制限する理由もないからです。
約束を破る可能性
しかし、合意の当事者が妻Aさんと夫Bさんである以上、その合意内容は妻Aさんと夫Bさんしか拘束できません。
つまり、妻Aさんは、不貞行為の相手方であるCさんとの間では、慰謝料請求をしないという合意をしていないので、Cさんに対し不貞行為を原因として慰謝料の請求をすることも考えられます。
しかし、仮に妻Aさんが合意に違反した場合、妻AさんのCさんに対して慰謝料請求をしないという言葉を信じて多くの解決金等を支払った夫Bさんとしては納得がいかないと思います。
このような場合には、妻Aさんが合意内容を守らなかったことについて合意違反による損害賠償請求をすることも考えられます。
しかし、妻Aさんがすんなりと賠償金を支払ってくれる可能性は低いと思われます。
また、夫Bさんが妻Aさんに対して裁判を起こすこともできますが、裁判は一般的に、解決まで長年月を要しますし、訴訟費用等の負担が大きくなってしまいます。
トラブル防止のために
上記のようなトラブルを防止するためのポイントとしては以下の方法が考えられます。
POINT①合意違反の場合の違約金を定めておく
予め、合意の中で、仮に妻Aさんが合意違反をした場合(Cさんに対して慰謝料請求をした場合)には、妻Aさんが夫Bさんに対して一定額を支払うことを合意内容に盛り込んでおくという方法です。
ここでのポイントは、一定額を明確にしておくということです。
一定額については、常識的な額であれば、特に制限はありません。
例えば、夫Bさんが妻Aさんに対して支払う慰謝料の額と同額などが考えられるでしょう。
POINT②不倫相手を合意の当事者にする
上記の妻Aさんと夫Bさんの合意内容が、妻AさんとCさんとの間を拘束しないのは、Cさんが合意の当事者になっていないからです。
そこで、Cさんとの間でも、合意の拘束力をもたせたい場合は、Cさんも合意の当事者に入れて、三者間での合意書を作成するという方法が考えられます。
ただし、この場合、合意を締結する際にCさんも妻Aさんと接触することとなります。
これを避けたいのであれば、弁護士に依頼して、代理人として合意を締結してもらうという方法も考えられます。
POINT③法的に有効な合意書を作成する
上記のいずれの場合であっても合意内容は口約束ではなく、書面化しておくべきです。
口約束だと、後で言った言わないのトラブルになる可能性があるからです。
また、合意書については、素人の方が作成するのはお勧めしません。
素人の方だと、せっかく合意書を作成しても、不備があると法的に無効となってしまう恐れがあります。
そこで、専門家に作成してもらうか、少なくともご自身で作成する場合は専門家に見てもらったほうがよいでしょう。
まとめ以上、慰謝料請求をしないという合意の問題について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
慰謝料請求については、これを請求しないという合意は認められます。
しかし、その合意はあくまで合意を締結した当事者のみを拘束するため、後々トラブルになる可能性があります。
トラブルを避けるために、専門の弁護士による適切なサポートを受けられることをお勧めいたします。
当法律事務所の離婚事件チームは、慰謝料の請求に精通した弁護士のみで構成される専門チームです。
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