養子縁組の解消後に親権者を決める方法は?【弁護士が事例で解説】

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

養子縁組解消後の親権者について質問です

元妻との間に生まれた10歳の次男は、現在母方の伯父の養子となっています。

しかし、その後、私と妻が離婚し、現在、次男の養親となった伯父から次男と養子縁組を解消したいと申し出られています。

養子縁組の解消後、私が次男を引き取りたいのですが、元妻も同じく次男の引き取りを希望しているようで、話し合いになりません。

養子縁組を解消した後の親権者を決めるにはどうしたらいいでしょうか。

 

 

弁護士の回答

離縁後に親権者となるべき者について父母の協議が調わない場合、家庭裁判所に対し、離縁後に親権者となるべき者の指定の調停または審判を申し立てることになります。

 

養子縁組とは

養子縁組とは、親子関係のない者同士に、法律上の親子関係を成立させる制度です。

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。

普通養子縁組の場合、戸籍上、実親との関係が残るため、二重の親子関係が生じることになります。

特別養子縁組の場合、戸籍上も実親との関係を断ち切ります。養親にとって、実子と同じ扱いにした縁組です。

ご相談の事案は、普通養子縁組の場合にあたります。以下、単に「養子縁組」といいます。

 

 

離縁はできるか?

養子縁組の解消、すなわち離縁について、養子縁組の当事者はその協議により、離縁をすることができます。

しかし、養子が15歳未満であるときは、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者(離縁代諾権者)とが協議しなければなりません。

養子の父母が離婚していなければ、離縁後の親権は父母が共同して行使することになるので、父母が伯父と協議することになります。

しかし、事例のケースでは、父母が養子縁組解消時にすでに離婚しています。

他方、日本では、離婚の際に、父母のいずれか一方を親権者と定めなければなりません。

話し合いこれを単独親権といいます。

事例のケースでは、いずれが親権者となっているか不明ですが、いずれにせよ養子が15歳未満のため、法定代理人である親権者が伯父と離縁の協議を行わなければならないでしょう。

なお、養子が15歳以上の場合は、法定代理人は不要ですので、養子自らが離縁の協議が可能です。

裁判で離縁が認められる場合

この事案では、伯父が離縁を希望しており、これに対して父母も反対していないようなので、協議で離縁が可能と思われます。

しかし、何らかの協議で協議が整わない場合、通常、離縁の調停を家庭裁判所に申し立てることとなります。

調停での成立も難しい場合は、審判離縁や裁判離縁を検討する必要があります。

裁判、訴訟裁判離縁の場合、裁判所が離縁を認めるためには離縁原因が必要となります(民法814条)。

離縁原因は次の3つがあります。

  1. 他の一方から悪意で遺棄されたとき
  2. 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
  3. その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

なお、1、2の場合には、裁判所が、一切の事情を考慮して縁組の継続を相当と認めるときは、離縁の請求が棄却される場合があります。

 

 

親権者の変更ができる?

この事案では、すでに離婚が成立しているので、父母のいずれかが親権者となっていると思われます。

親権とは

親権とは、簡単に言えば、子どもを育てていくことができる権利です。
法律上の親権の内容としては、①身上監護権(民法820条)と②財産管理権(民法824条)に分けられます。
わかりやすく言えば、身上監護権は子供と一緒に生活していく権利です。
財産管理権は子供に代わって子供名義の預貯金等の財産を管理する権利です。

親権者であれば、上記で説明した身上監護権があるため、子供の引取を希望すれば、通常は親権者が子供と一緒に生活できると考えられます。

したがって、例えば、離婚時に母を親権者と定めていれば、母親が子供の引取を希望すれば、基本的に母親が子供と生活していくことになります。

もっとも、母親と子供が一緒に生活してことで、子供に重大な悪影響が生じるような場合(例えば、母親側に重大な精神疾患がある場合など)、親権者の変更という手続きも検討できます。

これは、家庭裁判所に対して、親権者の変更の調停や審判を申し立てるという方法です。

裁判調停手続きは、話し合いによる解決を目指すものです。

この手続きは、どちらが正しいというような裁判所の判断が示されるわけではありません。

そのため、親権者の変更が難しい場合でも積極的に利用することができる点がメリットといえます。

しかし、相手が話し合いに応じてくれない場合、親権者の変更はできません。

これに対して、審判手続は、最終的に裁判所が親権者の変更の適否について、判断をしてくれる手続きです。

この審判を申し立てると、家庭裁判所は、未成年者の福祉のために必要があると認めるときに、親権者を他方の親に変更します。

申し立て先は、子供の住所地の家庭裁判所となります。

 

親権者の変更が認められる場合とは

親権者変更は、「未成年者の福祉のために必要がある場合」は認められます。

この事案では、父母双方とも子供との生活を希望しているため、上記要件を満たすのは基本的には難しいと考えられます。

しかし、例えば、以下のような場合は、親権者変更が認められる可能性があります。

  • 母親に生活していく能力がない。
  • 母親に子供を虐待したなどの事情がある。
  • 子供が明確に父親との生活を拒絶している。

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まとめ弁護士以上、養子縁組を解消した場合の親権者の変更について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

親権の変更は、あなたやお子さんの将来に大きな影響をあたえることが予想されるため、とても重要なものです。

当事務所の離婚事件チームは、離婚問題に精通した弁護士のみで構成されるチームであり、お子さんの親権に関するご相談を多く承っております。

親権者変更をご希望される場合、代理人として家庭裁判所に審判を申し立てることも可能です。

離婚後の親権についてお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。

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