示談後の慰謝料請求は認められる?【弁護士が事例で解説】

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

ご相談者Mさん (北九州市八幡西区)
60代男性
職業:会社員(嘱託)
世帯年収:600万円
解決方法:裁判離婚
離婚を切り出された

相手:60代自営業

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
財産分与 200万円支払う 0円 200万円減額
慰謝料 500万円支払う 0円 500万円減額
年金分割 50% 50%

 

状況

Mさんは、30年ほど前に、中学の同級生であった妻と結婚しました。

Mさんは、気が短く、些細なことで激昂することがありました。

また、激昂した際、妻に対しても殴る蹴る等の暴力を振るうことがありました。妻は暴力に耐えかねてシェルターに避難したこともありました。

さらに、Mさんは、同じ会社の同僚の女性と浮気・不倫を重ねていました。

このようなことから、妻はMさんとの離婚を決意して別居するともに、Mさんに対して慰謝料などの支払いを請求してきました。

Mさんは、自分に非があったことを反省し、妻との修復を希望しましたが、妻の離婚意思は固く、また、慰謝料の支払いを強行に求めました。

妻はMさんに対して、携帯のメールで毎日のように、慰謝料や財産分与の請求を行いました。

また、自宅の明け渡しも求めてきました。

Mさんは、妻とのやり取りに疲れて、妻に対して、次のメールを送りました。

「自分も住む場所が必要だから自宅を明け渡すことはできない。でも、今までのお詫びの気持ちとして300万円を用意する。残念だがそれですべてを終わりにしてくれ。」

これに対して妻は「わかった。」と返信しました。

数日後、Mさんは、300万円を準備して、妻に次のメールを送りました。

「300万円を用意した。今から送金しようと思う。そのかわり、今後、慰謝料や財産分与などは請求しないでくれ。」

これに対して妻は「はい。」と返信しました。

そして、Mさんは妻に300万円を送金しました。

それから数ヶ月して、妻は弁護士を立てて離婚調停を申し立てました。

妻は、離婚調停において、財産分与と500万円の慰謝料の支払いと求めました。

Mさんは妻からの要求を拒否したため、離婚調停は不成立となりました。

調停が不成立になったので、妻は離婚訴訟を提起してきました。

Mさんは、今後の対応等について、当事務所の離婚弁護士に相談しました。

 

弁護士の関わり

弁護士は、離婚裁判において、Mさんの過去の非は認め、離婚自体は争いませんでしたが、すでに離婚に伴なう財産給付に関する示談が成立していること等を主張しました。

これに対して、妻側の弁護士は、「示談金は慰謝料の一部にとどまる」「合意については心裡留保を根拠として無効である」などと反論してきました。

当事務所の弁護士は、本件の事実経過から、妻側の心裡留保という反論は認められないと主張しました。

最終的に、裁判所は、Mさん側の主張を全面的に認め、妻側の慰謝料と財産分与の主張を棄却しました。

 

補足

本件のメインの争点について解説します。

離婚について

裁判所が離婚を認めるのは5つの場合に限定されています。

すなわち、①相手方の不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上生死不明、④回復の見込みのない精神病、⑤婚姻を継続しがたい重大な事由の5つです。

本件は、Mさんの不貞行為がありました。

また、Mさんの暴力によって婚姻関係が破綻したのは明らかな事案だったので、離婚については妻側の主張が認められる見込みでした。

そのため、当事務所の弁護士も離婚自体については争いませんでした。

裁判で離婚が認められる場合について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

示談後の慰謝料等の請求について

本件において、Mさんが納得できなかったのは、示談が成立したと思ったのに、妻からさらに金銭を請求されたことでした。

Mさんとしては、妻に騙されたという意識が強く、妻と徹底的に戦うことにしたのです。

離婚の協議において、慰謝料の支払いなどについて、弁護士が作成する合意書に明確に記載しておけば、その後、相手が慰謝料を要求してきても、裁判で相手方の請求が認められることは通常ありません。

この場合、合意の存在が明確であり、その法的効力が否定される可能性がほとんどないからです。

しかし、本件の場合、弁護士が作成した合意書などの書面はなく、合意の存在を証明できるのはメールのやり取りだけでした。

このような場合、合意の存在の有無や法的効力について、後々問題となることがあります。

本件では、合意書はありませんでしたが、メールのやり取りがありました。また、その内容は、慰謝料及び財産分与等について、300万円で解決するという合意があることを証明するに足る内容でした。

また、メールのやり取りは数日間にわたっており、Mさんの300万円で解決しようという申し出に対し、妻側は熟慮する期間もありました。

このような事実経過から、裁判所は妻側の主張を認めませんでした。

慰謝料について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

示談成立に書面は必要?

示談(和解契約)については、必ずしも書面は必要ではありません。

和解契約に必要なのは、当事者の合意であり、それは口約束でも構いません。

ただ、口約束だと、後から言った言わないの争いになることが多々あります。

そのため、離婚の合意については、離婚専門の弁護士が作成する合意書があった方がよいでしょう。

離婚協議書についてくわしくはこちらのページをご覧ください。

離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。

ご相談の流れはこちらをご覧ください。

 

 


執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。







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