離婚後、妻の居住権はどうなりますか?【弁護士が解説】

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2019年実績)

持ち家の場合は財産分与の中で自宅の処分を決めることとなります。

賃貸の場合は借り主の名義変更などを検討することとなります。

 

居住権と離婚の問題

居住権とは、一般に、自宅に居住することを生存に必要な権利として保護するために用いられる用語であり、法令上の用語ではありません。

例えば、離婚すると持ち家の場合は自宅の処分が問題となります。

持ち家は、通常夫名義であることが多く、このような場合に妻側から居住権が主張されることがあります。

賃貸の場合も、夫が借り主として契約されていることが多く、契約を解除する場合に妻側から居住権が主張されることが考えられます。

以下、持ち家の場合と賃貸の場合について、それぞれ詳しく解説します。

 

自宅が持ち家の場合

自宅が持ち家の場合、財産分与の問題となります。

財産分与とは、結婚して夫婦が築いてきた財産を離婚時に精算するという制度です。

財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。

例えば、結婚前に購入した自宅で住宅ローンを完済していた場合の自宅や、結婚後でも親から相続を受けた自宅などは特有財産として、財産分与の対象から外れます。

自宅が共有財産の場合

自宅を購入したのが結婚後の場合、通常は共有財産といえます。

妻が自宅の取得を希望して、夫が同意すれば、妻は自宅に住み続けることが可能です。

この場合、後々のトラブル防止のため、公正証書等で財産分与の合意(自宅を妻へ分与するという合意)を締結し、かつ、妻への名義変更をしておくべきです。

 

住宅ローンの問題

住宅ローンが残っている場合には、その処理が問題となります。

住宅ローン残高が自宅の時価を上回っていて、かつ、自宅のほかにめぼしい財産がないような場合は、基本的には財産分与請求権は生じません。

この場合、残った住宅ローンの支払いをどうするかを協議しなければなりません。

自宅が夫名義の場合、ローンの弁済も夫名義の銀行口座から引き落とされていることが多いと思われますので、妻が自宅を取得し、残ローンの支払をするのであれば、残ローンの支払口座を変更するなど、ローン債権者(銀行)との協議が必要です。

また、住宅ローンが残っている場合は、妻への名義変更が困難です。

この場合、通常、夫が住宅ローンの債務者となり、自宅に抵当権が設定されていますので、ローン債権者(銀行)との協議が必要となってきますが、なかなか応じてくれません。

住宅ローンが残っているような場合は、離婚専門の弁護士へ早めに相談されたほうがよいでしょう。

このほか、自宅の光熱費について、契約者や支払口座の変更なども忘れないようにしましょう。

 

自宅が特有財産の場合

夫が結婚前に自宅を購入し、かつ、購入代金全額を支払っていたような場合や、夫が自宅の購入資金全額を両親からもらっていたような場合、その自宅は夫の特有財産と考えられます。

夫の特有財産の場合、財産分与の対象とはなりませんが、夫から贈与を受ける、または、居住できる権利(賃貸借や使用貸借)の設定を受けることで、居住は可能です。

賃貸借は有償で居住することで、使用貸借とは無償で居住することです。

いずれにせよ、後々トラブルとならないように、いつまで居住できるか、賃料、権利費や光熱費の負担について、公正証書等できちんと合意しておく必要があります。

 

賃貸の場合

夫が賃貸借契約を締結している不動産に居住している場合、離婚時の処理が問題となります。

この場合、①夫が居住し続ける、②妻が居住し続ける、③誰も居住しない、のいずれかとなるでしょう。

この場合の処理方法をまとめると、下表のとおりとなります。

▶︎ 夫が居住
処理方法 名義変更は不要
留意点 妻が保証人になっている場合保証人を外すことを検討
▶︎ 妻が居住
処理方法 借主を妻に変更するよう貸主側と交渉
留意点 契約変更が不可の場合は引っ越しを検討
▶︎ 誰も居住しない
処理方法 賃貸借契約を解除
留意点 敷金や原状回復をどうするか財産分与の中で協議

 

 

離婚時の立ち退きの問題

自宅が持ち家の場合でも、賃貸の場合でも、相手との協議がまとまらないと、妻側は自宅を立ち退くように求められるケースもあります。

しかし、形式上、夫名義の自宅であったとしても、財産分与などの離婚条件が確定していない以上、妻の居住権をないがしろにはできません。

したがって、協議が未成立の場合、夫が一方的に妻に対して立ち退きを求めることはできません。

もっとも、住宅ローンが残っている場合はその債権者(銀行)、賃貸の場合や賃貸人(大家)という利害関係者がいます。

そのため、債務者(名義人)である夫は、これらの債権者・賃貸人との契約内容を順守しなければなりません。

したがって、夫婦双方にとって、負担が少ない最適な解決方法を検討していく必要があります。

 

 

まとめ以上、離婚と居住権の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

自宅が持ち家の場合、居住権は財産分与の中で話し合う必要があります。

自宅が賃貸の場合、妻が自宅に居住する場合は名義変更を検討していく必要があります。

トラブル防止のためには、協議の結果をまとめた書面を作成することがポイントとなります。

また、離婚問題の中で居住権は一部に過ぎず、その他に解決すべき諸条件があります。

これらの判断や手続きは、専門知識とノウハウが重要となります。

そのため、居住権については、離婚題を専門とする弁護士への早い段階でのご相談をお勧めいたします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

 

 


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執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2019年実績)