親が頭金を出した不動産。財産分与はどうなる?【弁護士が事例で解説】

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2019年実績)

弁護士の回答

親が支払った頭金は特有財産になるため、財産分与において考慮されることとなります。

しかし、オーバーローンの場合は法律上戻してもらえない可能性があります。

以下のような具体例を用いて説明します。

状況

夫婦は結婚後、5000万円のマンションを購入しました。

そのうち、妻の親が1000万円を援助してくれ、これを頭金にしました。

その残額の4000万円をローンとして返済することにしました。

別居時にマンションの時価が3000万円、ローンの残額が1000万円だった場合、財産分与をどのように考えたらいいでしょうか。

なお、マンションしか他に財産はありません。

 

 

財産分与とは

弁護士財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を分ける制度です。

民法は、「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定しており、財産分与の根拠はこの条文となります(768条)。

財産分与の対象となる財産は、基本的には別居時に存在する財産と考えられています。

ただし、事案によっては別居時ではなく、離婚時の財産を対象とする可能性もあります。

財産分与について詳しくはこちらもご覧ください。

 

特有財産とは

たくさんのお金のイメージ画像財産分与は、結婚後に築いた財産を分ける制度であり、結婚前に保有していた財産(預貯金や生命保険等)は対象から外れます。

また、親からの贈与や相続など、結婚生活とは無関係に取得した財産も対象から外れます。

事例の場合、結婚後に購入した不動産の頭金を親から出してもらっているので、贈与を受けていると考えられます。

したがって、その部分については財産分与の対象から外れることとなります。

なお、贈与ではなく、貸付けということであれば、特有財産の問題ではありません。

この場合、貸付を受けた債務者は、親に対して返済義務があります。

また、財産分与のプラスの財産からこの返済されていない額をマイナスの財産として控除することになります。

財産分与について、詳しくはこちらのページで解説しています。

 

 

自宅等の不動産は注意が必要

上記のとおり、親が出してくれた頭金そのものは、特有財産であり、財産分与の対象から外れます。

しかし、その頭金が丸ごと返金すべきかと言うとそうではありません。

これは、自宅等の不動産の場合、財産分与において時価査定という、特殊な評価をするからです。

複雑な問題なので、以下、上記事例をもとに、わかりやすく解説いたします。

ステップ1 財産分与の対象額を算出
別居時を財産分与の基準時とした場合、以下の計算式より、2000万円が財産分与の対象額となります。
3000万円(時価)- 1000万円(ローン残額)= 2000万円
通常の場合、財産分与では財産を2分の1にしますから、1000万円ずつを取得することになります。
したがって、妻は1000万円をもらうことができます(他に財産があればもちろんそれも2分の1取得します。)。
しかし、この事案では、妻の親が1000万円の頭金を出してくれています。
この分を考慮しなければなりません。

ステップ2 特有財産の現在価値を評価する

妻は、親からの援助を通じて、マンションの取得代金5000万円のうち、1000万円、つまり20%(5分の1)相当額の形成に寄与したということになります。
1000万円(頭金の額)÷ 5000万円(不動産の取得額)= 20%
すると、財産分与の対象額2000万円の20%(5分の1)の400万円は、妻の寄与(特有財産)により形成されたと考えられます。
2000万円(時価)× 20%(妻の特有部分の寄与度)= 400万円

ステップ3 特有部分の残存価値を時価から控除する
財産分与の対象財産の2000万円から上記で算出した特有部分の残存価値を控除すると、1600万円が財産分与の対象となります。
2000万円(時価)− 400万円(特有部分の残存価値)= 1600万円

ステップ4 特有部分の残存価値を加算した妻の取得分を算出
財産分与の対象額を2分の1し、これに特有部分の残存価値を加算すると、妻の取得分は1200万円となります。
1600万円(財産分与の対象)× 1/2(財産分与の割合)= 800万円
800万円 + 400万円(特有部分の残存価値)= 1200万円

以上から、1200万円が妻に分与すべき額となります。

※上記の計算過程は、自宅の評価方法の一例です。事案によってことなる計算が行われる可能性もあるため詳しくは専門家に相談されるようにしてください。

 

 

オーバーローンの場合

家族日本の不動産の場合、時価が取得価額から大幅に減少する傾向にあります。

そのため、住宅ローンが多く残っているケースでは、オーバーローン(時価よりも住宅ローン残額が上回っていること)の状態にある可能性があります。

このような場合、親が出してくれた頭金はどうなるのでしょうか。

オーバーローンのケースでは、そもそも財産分与の対象財産が存在しないこととなります。

例えば、上記の例で、住宅ローン残額が4000万円だったとすると、自宅の価値はありません。

3000万円(時価)− 4000万円(住宅ローン残額)= −1000万円

財産分与は、プラスの財産がある場合にこれを分けるという制度です。

したがって、他に資産がない場合は、相手に財産分与を求めることができません。

また、頭金(特有財産)の残存価値も存在しないため、法律上は返金してもらうことは難しいと思われます。

 

 

返金の可能性はないのか

このようなケースでは、妻側からすれば、離婚するのだから頭金は返してほしいと相談されることが多くあります。

そのお気持ちも十分に理解できます。

財産分与では、上記の理屈以外にも様々な事情を考慮できる可能性があります。

また、交渉にしだいでは相手に一定額を返金してもらう場合もあります。

そのため、頭金の返金については、財産分与に詳しい専門家に相談されて見られることをお勧めいたします。

 

まとめ弁護士
以上、親が頭金を出している場合の財産分与の問題について解説しましたが、いかがだったでしょうか。親が頭金を出している場合、特有財産と考えられるため、財産分与において考慮することが可能です。しかし、多くの事案ではまるごと戻ってくるわけでなく、現在価値に引き直されることになります。

また、オーバーローンの場合は法律上はまったく戻ってこない可能性もあります。

しかし、相手との交渉しだいでは、一定額を戻してもらうなどの柔軟な解決が可能な場合も考えられます。

財産分与は、上記のとおり複雑な制度です。

不動産だけであればこのとおりでよいのですが、他の財産も加わってきた場合には、さらに複雑になってきます。

また、不動産の財産分与にあたっては、時価を適切に査定することが不可欠です。上記の事例では時価を3000万円と記載していましたが、適正な時価そのものについて争いとなることが多く、これを適切に算出することが重要なポイントとなります。

私たちデイライト法律事務所は、不動産業者と連携していますので、迅速・適正に不動産の時価を査定することができます。

依頼者の方が自ら手配していただかなくても大丈夫です。

こうしたサービスの提供も私たちデイライト法律事務所の強みです。

不動産の財産分与について、また財産分与一般について、気になることがあれば、いつでも当事務所まで相談にいらしてください。

ご相談の流れはこちらからどうぞ

 

 


財産分与
執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
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