他の女性と同棲した場合に離婚できる?【弁護士が事例で解説】

執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。

ご相談者Kさん (北九州市小倉南区)
60代男性
職業:医師
世帯年収:2100万円
解決方法:調停離婚
子どもあり (4人)
離婚を切り出した

相手:50代看護師

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 × 離婚の成立
養育費 年間100万円 年間100万円
財産分与 相当額を支払う 住宅マンションの譲渡
慰謝料 3000万円を支払う 300万円 2700万円減額
年金分割 50% 50%

 

状況

Kさんは、約30年前に、同じ病院の看護師であった妻と結婚しました。

その後、子供4人を設け、自宅マンションを購入しました。

しかし、妻との関係がうまくいかず、他の女性と不倫をするようになりました。

そして、Kさんは、妻と子供を残して自宅を出て、その女性と同棲するようになりました。

Kさんは、その後、妻や子供たちとまったく連絡を取ることもありませんでした。

同棲していた女性との間に、子供を一人も受けましたが、その女性ともしだいに関係が悪化していきました。女性は、Kさんが離婚をせず、正妻になれないことに不満を持っていました。

そして、同棲してから10年ほどが経過したある日、その女性は子供を連れて出ていきました。

Kさんは、妻や子供たちとの関係を精算したいと思い、今後の対応等について、当事務所の離婚弁護士に相談しました。

Kさんは、妻との離婚を正式に完了すれば、女性と復縁できるかもしれないという一途の思いを持っていました。

 

弁護士の関わり

弁護士は、依頼を受けると早速、妻に対して、協議離婚を申し入れました。

これに対して、妻も弁護士を立てて回答してきました。妻側は離婚には応じるものの、その条件として、解決金3000万円(慰謝料や財産分与を含めたもの)の要求をしてきました。

当事務所の弁護士は、妻側の要求があまりにも高額であり、当事者間での話し合いによる解決が困難と判断し、離婚調停を申立てました。

離婚調停において、当事務所の弁護士は、慰謝料として300万円、養育費としてまだ未成年だった四男の大学進学費用を支払うことを提示しました。

また、調停による早期解決を前提として、妻たちが住んでいた自宅マンションを長男に贈与することを提案しました。

しかし、妻側は調停段階においても解決金3000万円を支払うことを求めてきました。

これに対して、当事務所の弁護士は、別居時におけるKさんの財産を開示し、妻側を説得しました。

すなわち、別居した当時、Kさんは自宅マンションを持っていましたが、当時、多額の住宅ローンが残っていたことから、財産分与の対象となる共有財産はマイナスとなっていました。

最終的に、調停委員会はKさんの言い分を認め、妻側を説得しました。そして、当方の提案どおり、調停離婚が成立しました。

 

補足

本件のメインの争点について解説します。

離婚について

裁判所が離婚を認めるのは5つの場合に限定されています。

すなわち、①相手方の不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上生死不明、④回復の見込みのない精神病、⑤婚姻を継続しがたい重大な事由の5つです。

本件は、別居から10年以上も経過していたので⑤に該当する可能性がありました。

しかし、他方で、Kさんは他の女性と不貞行為をしたため、いわゆる有責配偶者でした。

有責配偶者からの離婚請求について、裁判所は原則的には認めず、例外的に次の3要件を満たす場合にのみ認めるという立場をとっています。
①別居期間が相当の長期間に及ぶこと。
②夫婦間に未成熟子が存在しないこと。
③相手方配偶者が離婚によって極めて苛酷な状態におかれるような事情がないこと。

有責配偶者からの離婚請求についてはこちらのページで詳しく解説しています。

本件では、別居から10年以上が経過していたことや、妻側の状況から考えて、①と③の要件は問題ないと思われました。

一番下の子どもが大学生であったことから②は問題となる可能性がありましたが、仮に裁判となって判決まで行くとなると、長期間を要するため判決時(口頭弁論集結時)には大学を卒業しており、②の要件もクリアできそうでした。

 

慰謝料について

本件では、Kさんは他の女性と不貞行為を行い、それが原因となって別居していたことから、妻側に離婚慰謝料を支払う義務がありました。

もっとも、相手方は慰謝料や財産分与を合計して、解決金として3000万円を要求しており、慰謝料の相場としては法外といえるものでした。

慰謝料の減額について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

財産分与について

財産分与についは、その対象となる財産の基準時が問題となります。

本件では、10年前に別居していたことから、裁判では別居時が基準時となる可能性が高い事案でした。

別居時のKさんの財産は、自宅マンションぐらいしかありませんでした。

また、当時、Kさんは、約4000万円もの住宅ローンを組んでいました。

不動産については、財産分与において、時価で評価されます。

自宅マンションは購入額は5000万円ほどでしたが、築20年ほど経っている物件だったため、現在の時価は1000万円未満でした。

不動産の場合、財産分与は時価から基準時のローン残額を控除して価値を算定します。

そのため、裁判では、マンションの価値はマイナスになることが想定されました。

1000万円(時価)- 4000万円(基準時ローン残高)= △3000万円

したがって、仮に裁判になっていれば、Kさんが妻に分与する財産はないということになっていたと思われます。

財産分与について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。

ご相談の流れはこちらをご覧ください。

 

 


執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の問合せ件数は累計1万件超え。







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