離婚が子供に与える影響とは?|親権・戸籍・扶養等を徹底解説
離婚に直面したとき、子供のことが気がかりになるはずです。
まず、最初に考えなければならないのは、離婚が子供に対してどのような影響を与えるか、ということです。
一般に、離婚は子供にマイナスの影響を与えると思われがちですが、果たしてそうなのでしょうか。
状況によっては、形骸化した夫婦生活を無理に継続するよりも離婚した方が子供にプラスになることもあります。
また、離婚すると、これまでの生活が一変します。
子供の親権はどうなるのか、離婚後も子供と会うことはできるのか、子供の扶養はどうするのか、など考えなければならないことがたくさんあります。
ここでは、上記について、離婚問題に精通した弁護士が詳しく解説します。
ぜひ、参考にされてください。
この記事でわかること
この記事を最後まで読んでいただけると次のことがご理解いただけます。
- 離婚することで子供にどんな影響があるか
- 離婚した場合に子供との関係性(親権・面会交流・養育費・相続権)はどうなるか
- 離婚に伴う子供に関しての大切な手続の流れや方法
目次
離婚が子供に与える影響
子供がいる場合、離婚が子供に与える影響を考えなければなりません。
一般論としては、「離別家庭(離婚した家庭)の子供」と「非離別過程(離婚しなかった家庭)の子供」との間では、次のような差が生じると言われています。
- 離別家庭の子供は非離別家庭の子供と比べて、平均的にはより多くの問題を抱えている
- 親の離婚は次の点で子供に影響を及ぼす可能性がある
心理的な要素:情緒的適応、不安、抑うつ
教育程度
職業上の地位
生活水準 - 離別家庭の子供は非離別家庭の子供と比べて、将来離婚及びシングルペアレントになる可能性が高い
しかし、子供に及ぼす影響は離婚だけではありません。
すなわち、家庭に関して言えば、離婚の他にも、虐待、ネグレクト(育児放棄や育児怠慢)、夫婦間の不調和(夫婦喧嘩)、親のメンタル不調、薬物依存など、様々な問題が作用している可能性があります。
そのような場合は、離婚した方が子供にとってプラスの影響を与える可能性もあります。
また、そのような劣悪な環境になかったとしても、親の離婚が子供の将来にプラスに働いた例もたくさんあります。
(例えば、執筆者の経験でも、両親の離婚の影響から弁護士を目指して猛勉強し、現在、離婚専門の弁護士として活躍している方もいます。)
そのため、「離婚の子供への影響」という一般論はあまり意味がないと考えます。
むしろ、具体的な状況下において、子供への影響を検討していくことが重要です。
そこで、以下では状況別の具体的な影響について、ご紹介いたします。
子供が小さいケース
子供が乳幼児の場合、父親のことを明確に認識していません。
そのため、離婚時やその直後の子供のメンタル面への影響は小さいと考えられます。
もっとも、離婚後、年月が経過して子供が物心ついてくると、父親がいないことに疑問を持つようになるでしょう。
そのようなときには、なぜ父親がいないのか、きちんと説明してあげる必要が出てきます。
子供が5歳程度のケース
子供が4〜5歳になると、両親と強い関係が形成されています。
これまで同居していた両親が別々に生活をすることになると、その急激な環境の変化に戸惑い、情緒が不安定になることが予想されます。
そのため、何も言わずに突然別居するのは基本的には避けるべきです。
この年齢以降の子供に対しては、両親が一緒に生活しなくなることについて、きちんと説明してあげるべきでしょう。
その際に、後述するように、相手のネガティブな内容(悪口)は伝えるべきではありません。また、両親とも子供に対する愛情が変わらないことを伝えるなどして安心させてあげるべきです。
この年齢の子供は、通常、社会性がはぐくまれ、言語能力が発達しています。
そのため、きちんと説明してあげることで、情緒を安定させることが期待できます。
離婚を子供に伝える際の注意点
別居や離婚を伝えるにあたり、子供に対して最低限伝えなければならないことは次の2点です。
- ① これから父(または母)相手方配偶者と一緒に生活することができなくなること
- ② 父(または母)相手方配偶者とは別に生活することになっても、親子であることには変わらず今後も会うことができること(※面会交流制限事由がない場合)
離婚や別居にあたり、特に相手方に不貞等の有責事由がある場合、ついつい子供に対してもその事実を伝えてしまう方がいらっしゃいます。
しかしながら、子供にとってはその相手方配偶者も実の親であり、血の繋がった実親です。
その実親が行った有責事由を具体的に伝えられてしまうと、子供が自分を責めてしまったり、相手方配偶者に対して大きな嫌悪感を抱いてしまうことがあります。
そのため、成人に近い子供が自ら望む場合はともかく、子供に対して離婚事由を明確に伝えることはお勧めしません。
離婚に至るまでに生じた問題はご夫婦の事情です。
子供を必要以上に巻き込まないためにも、相手方配偶者の悪口や不満を伝えることは控えましょう。
そして、子供に不安を与えないために、今後生活を共にしない配偶者との関係についても見通しを伝えるべきでしょう。
子供が1人のケース
子供が1人の場合、兄弟がいる状況と比較して、「家庭で独りになる時間が増加すること」が懸念されます。
特に、親権者がフルタイムで仕事をしている場合、子供と触れ合う時間が少ないという問題があります。
子供の年齢が小学校高学年くらいになると、それほど心配はいらないかもしれませんが、子供が低学年の場合は独りで寂しい思いをしていないか、十分なケアが必要となるでしょう。
自宅に親権者の両親(子供の祖父母)等がいる場合、寂しさはそれほど感じないかもしれません。
そのため、子供が小さい場合はご両親との同居を選択される方もいらっしゃいます。
また、離婚による子供への影響を極力減少させるために、面会交流の回数を増やすことを検討されると良いでしょう。
面会交流を充実させることができれば、子供の不安を少なくできると考えられます。
子供が2人のケース
子供が2人の場合、1人の状況と比べて、家庭でコミュニケーションを取れる家族がいるため、その点では心配は少ないでしょう。
ただ、兄弟の年齢や性別等によって、子供同士の関係が異なるため、個別具体的な状況に応じて心のケアを考える必要があります。
また、子供が1人の場合よりも、子供のための生活費(食費、被服費、住居費等)が増加するため、金銭的には苦しくなる可能性があります。
養育費の金額は、子供の数が増えればその分増額されますが、生活費の増額分に不足することもありますので、事前に養育費の見込額を調べておく必要があります。
子供が3人のケース
子供が3人の場合、子供同士の活発なコミュニケーションが期待できます。
そのため、基本的には家庭で独り寂しい思いをするという心配は必要ありません。
しかし、子供の数が多い分、生活費(食費、被服費、住居費等)が増加するため、金銭的には苦しくなる可能性があります。
養育費の金額は、子供の数が増えればその分増額されますが、生活費の増額分に不足することもあります。
例えば、子供の数が3人の場合、1人の場合の3倍というわけではありません。
そのため、事前に養育費の見込額を調べておく必要があります。
虐待があるケース
子供が親から虐待を受けているようなケースでは、むしろ、離婚した方が子供にとってはプラスとなる事案がほとんどだと考えられます。
虐待の程度にもよりますが、重大な場合(性的虐待や怪我をともなう暴力など)は、そのような親との同居を継続することで、子供の健やかな成長を阻害する可能性が大きいと考えられるからです。
また、子供に対する虐待がなくても、配偶者への虐待があるケースも考えられます。
子供にとっては自分の親が他方の親から虐待を受けている様子を見るのはとてもつらいはずです。
このような事案は、子供に対する精神的虐待と言えます。
そのため、子供に対する虐待と同様に離婚した方がプラスになる可能性があります。
親の離婚で子供がストレスを感じることとは
両親の離婚は少なからず子供にストレスを生じさせます。
もっとも、子供にとっての離婚のストレスは、離婚した後だけでなく、離婚に至るまでにも生じます。
すなわち、「子供のため」との思いで離婚しない決断をしても、その選択が必ずしも子供のストレスを軽減することにはなりません。
離婚の選択をした上で、両親がそれぞれ充分なケアを行うことが、子供のストレスを軽減させることもあります。
以下、状況別でどのようなストレスを感じるかを具体的に考えていきましょう。
離婚に至るまでのストレス 〜同居している場合〜
離婚が成立するまでに夫婦が同居している場合、家庭内において不和を抱えたまま生活しているケースがほとんどです。
夫婦間にDV等が存在している場合、子供がその状況を目撃しているだけで、生命や身体への恐怖を感じさせるだけでなく、「自分の存在が原因なのではないか」、「(夫婦の一方が他方を叱責する場合)なぜ父親・母親が責められなければならないのか」、「家族がバラバラになってしまうのではないか」と不安を感じさせることとなります。
不仲のまま『一緒にいること』がストレスとなりうるのです。
子供の前での夫婦喧嘩や夫婦の一方もしくは双方が無視や無反応のような状態・一方が他方を抑圧するような言動(いわゆるモラルハラスメント)が存在する場合も同様です。
夫婦で子供に気を遣い、夫婦の不和を見せないようにと心がけていたとしても、子供は親の表情や口調、態度などから家庭内の雰囲気を敏感に感じとります。
つまり、よほど上手に隠さない限り、離婚が検討される夫婦関係の不和は子供にストレスを与えていると考えた方がいいでしょう。
家庭内の不和を感じとった子供は、親の顔色を窺うようになったり、表情が曇る、作り笑いが増えることがあります。
また、大人の気を引こうとする行動がみられたり、逆に精神的に自立しようと年齢の割にしっかりしてしまうなどの変化が現れることがあります。
『子供のために』と無理に感情を抑え込み、同居を続けてしまうことが、かえって子供の心身の健全な成長を妨げることがあります。
DVやモラルハラスメントがある場合はもちろんですが、家庭内に修復が見込めない不和がある場合、離婚又は別居をして両親それぞれに笑顔が戻ることで、子供をストレスから解放できることもあるのです。
状況 | 対応策 |
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別居や離婚を検討 |
離婚に至るまでのストレス〜別居している場合〜
別居が子供に与えるストレスは、片親との離別や経済的な困窮を含む生活の変化です。
片親との離別
特に子供と別居した親との関係が良好であった場合は、離別によるストレスは大きいでしょう。
もっとも、同居している親の認識として子供と別居親との関係が良好とはいえなかった場合(例:別居してから子供が父親・母親の話をすることがない)でも、ストレスを感じていないということではありませんので留意が必要です。
両親が別居した場合、子供は同居しない親(別居親)に会えないのではないかという不安を感じることがあります。
また、子供は同居している親(同居親)に気を遣い、努めて別居親の話題を出さない、同居親から「会いたい?」などと尋ねられても本心とは裏腹に「会いたくない」などと答えたり、はぐらかすような言動をとることがあります。
離別による子供のストレスを緩和させるためには、別居の段階で両親が、別居親と子供の面会交流についてきちんと取り決めを行うことが有効です。
子供にとって別居親と定期的に会うことで「自分は(別居親に)捨てられたのではない」との自己肯定に繋がり、両親それぞれからの愛情を受けとることができるようになります。
なお、子供が同居中に別居親から虐待等を受けていたなどの事情がある場合には別の配慮が必要となります。
その子にとって面会交流をすべきか判断に迷う場合には、弁護士や家庭裁判所の関与を検討すべき場合もあります。
状況 | 対応策 |
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一方の親に会えないという不安感 | 定期的な面会交流 |
離婚に至るまでのストレス〜面会交流のストレス〜
話し合いが調わない等の事情から別居親と幼少の子供の面会交流を実施するまでに期間が空いてしまった場合、次の症状や仕草が現れることがあります。
これは、面会交流をすることについて同居親からどう思われているのか、別居親に受け入れてもらえるのか、何を話せば良いのかというような子供の不安や緊張からくるものと思われます。
もっとも、これらの症状や仕草は、継続的な面会交流を行い、両親が子供の前で他方の親の悪口を言わない、面会交流に前向きな言動(同居親による「今日は楽しかった?」という声かけなど)をすることにより解消されていくことがほとんどです。
子供の症状・仕草 | 対応策 |
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※面会交流にあたり子供に大きなストレス症状が現れ、継続して解消されない場合には、面会交流調停での家庭裁判所調査官の関与を求めたり、心療内科の医師の意見を聞くというような方法を検討すべきでしょう。
離婚に至るまでのストレス〜生活の変化〜
離婚による経済的困窮から同居中に比べて生活水準が下がったり、引っ越しや転校等により生じる生活環境の変化は、子供にストレスを与えます。
校区外への引っ越しは、慣れた学校等の教育機関から離れ、それまでに築き上げた友人からも離れてしまうことになります。
可能な限り子供が慣れた環境からの変化を少なくするために、転校等は避けたいところです。
しかし、実家の援助や親の職場の関係上、転校を余儀なくされる場合も当然のことながら考えられます。
そのような場合は子供に対し、転校等が必要な理由を十分に説明し、それまでの友人関係が断絶しないようなフォローを行ったり、学校側と相談しながら転校時期を考慮する(進級時期等)というような配慮を行うことが必要となります。
また、経済的困窮についても、衣食住のクオリティの低下だけでなく、それまでできた子供の習い事などができなくなるというような制限がかかることがあります。
この点については、できる限り別居前の経済水準を保つため、相手方配偶者に生活費としての婚姻費用(生活費のこと)を請求することが必要となります。
もっとも、習い事等については生活必需とは言い難く、生活費としての婚姻費用の費目として請求が難しい面があります。
子供の意思に反して習い事を辞めなければならないような状況となる場合には、親から子供に対し、誠実に説明を行うべきでしょう。
ストレスの原因 | 対応策 |
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離婚した後のストレス
離婚した後に子供は、上記【別居した場合のストレス】に加え、両親の仲が戻らず片親と別家庭となったという認識を持ったり、自らの希望する進路を経済的に諦めなければならないのではないかというような不安を持つことによるストレスを感じることが考えられます。
これらの不安に関しては、定期的な面会交流を続けることに加え、別居親からの養育費を得たり、児童扶養手当等の行政の支援等を得ることで解消される余地があります。
離婚後に特有のストレス | 対応策 |
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離婚において最も注意したい子供の親権
子供がいるとき、最も注意しなければならないのは親権の問題です。
日本では、共同親権が認められていないため、父母が離婚するときにいずれか一方を親権者として指定しなければなりません。
そのため、親権の取得を希望する方は、まず第一に、「仮に離婚した場合、自分に親権が認められるか」ということを検討しておく必要があります。
なお、親権に関しては、一般論としては、女性が取得する可能性が高いと言われています。
例えば、家庭裁判所の統計データによれば、子の親権者を指定する際に、女性が親権者となった割合は全体の約93.8%となっています(令和3年の「離婚の調停成立又は調停に代わる審判事件」表23)。

参考:司法統計|最高裁判所
しかし、上記は親権に争いがない事案の件数が含まれているため、あくまで参考にしか過ぎません。
離婚事案の多くは、男性が親権を争いません。
男性が親権を本格的に争った場合は、女性でも親権の取得が認めらない事例はたくさんあるため注意が必要です。
そのため、親権を希望する方は、ご自身の状況において、親権を取得できる見込みについて適切に判断しなければなりません。
親権の取得を強く希望されている方は、親権についての詳しい解説ページをご覧ください。
子供に親権者を選ばせるべきか
幼少の子
両親の離婚にあたり、どちらが親権者となるかについて子供に選ばせることを考える親御さんがいらっしゃいます。
もっとも、幼い年齢の子供に自らの親権者の選択をさせるべきではありません。
離婚という選択は、あくまで両親の事情です。両親の事情による親権者の争いに、子供を巻き込むべきではありません。
また、子供に親権者を選択させることは、一方の親を選ぶことによりもう片方の親を捨てたというような認識を持たせてしまうことになり、無用なストレスを与えてしまいます。
このような認識は、その後の親子関係や面会交流にも悪影響を及ぼし、ひいては子の心身の健全な成長を妨げることにも繋がりません。
そのため、幼い子供に親権者を選ばせることは、決して行ってはいけません。
15歳を超えた子
15歳を超えた子供については、家庭裁判所においてもいずれの親を親権者とするかの意向が確認され、その意思が尊重されます。
これは、15歳を超えた年齢の子供であれば、判断能力が身についているだけでなく、親権者を選択することに対する精神的負担も軽減されると考えられているからです。
10歳以上15歳未満の子
これに対し、10歳以上15歳未満の子供についても、親権者についての意向が確認されます。
しかし、15歳未満の子供については、その意向のみによって親権者が決定されることはありません。
これは、子の判断能力もまだ未熟とされ、幼少の子と同様、親権者を選択させることによる精神的負荷が大きいとされることによります。
離婚に伴う子供に関しての大切な手続
子供の戸籍について
離婚後、通常、子供は親権者の戸籍に入ることになります。
戸籍筆頭者ではない配偶者(通常は母親)が親権者となる場合、その配偶者が旧姓に戻る・結婚していたときの姓を継続して使用するかにかかわらず、子供をその配偶者の戸籍に入れるために「子の氏の変更許可審判」の審判申立てが必要になります。
「子の氏の変更許可」という名称から、婚氏続称すなわち婚姻時の姓を継続使用する場合には、子の姓も変わらないため、子の氏の変更許可の申立ては不要であるように思えます。
しかし、名称は「子の氏の変更許可」であっても、この申立ての本質は戸籍の異動を主とするものです。
そのため、姓が変わらないからと放置せず、子の氏の変更許可の申立てを行うべきでしょう。
例)戸籍筆頭者父、結婚時の姓が「鈴木」、母の旧姓が「田中」の場合
なお、当事務所では、子の氏の変更許可について、書式をホームページ上で公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。
子供の苗字はどうなる?
離婚すると、子供の苗字は通常親権者(多くの場合は母親)と同じ苗字となります。
すなわち、離婚するときに、母親が結婚しているときの姓を継続して使用することを選択すれば、子供の苗字の変更はなく、母親が旧姓に戻ることを選択すれば、子供の苗字は戸籍上は変更されることとなります。
自分は旧姓に戻りたいが、子供が姓を変えたくないという場合
離婚し、親権者の姓が変更される場合、上述のとおり、子供は親権者と同じ姓となるのが原則です。
しかし、子供について、通学先や友人関係を気にして姓を変えたくないという場合があります。
離婚する家庭が増加している現代においては、各通学先において戸籍上の姓とは別に、通称名として親の離婚前の姓(上記の例で「鈴木」)の使用を許可してもらえる場合がほとんどです。
戸籍上の姓は親権者に合わせる以上、親権者が婚氏続称をしない場合、戸籍上、子供の姓は「田中」に変わることになります。
しかし、通称名としてもともとの姓(鈴木)を使用できるのであれば、姓を変えることによる生活上の影響を最小限に抑えることができるでしょう。
子供の苗字や戸籍について、よりくわしくお知りになりたい方はこちらのページをご覧ください。
子供とのつながりはどうなる?
お子さんがいると、離婚することで子供の扶養、面会交流、相続などがどうなるかご心配かと思います。
以下、これらについて解説します。
離婚すると父親は子供に会えない?〜面会交流について〜
上述したとおり、離婚すると多くの場合、母親側が親権を取得することとなります。
この場合、父親は子供と会うことができるのか、という点が問題となります。
離婚した後、親権を取得しなかった親(多くは父親)が定期的に子供と会うことを面会交流といいます。
面会交流の実施は、両親の離婚や別居による離別による不安やストレスを緩和するため必要となります。
両親の離婚や別居により、片親と離れて生活することになったとしても、子供にとっては一緒に住んでいない親も、血の繋がった家族です。
それまでの親子関係次第での配慮は必要となりますが、定期的な面会交流を実施することにより、子供にとっては離れて暮らす親からの愛情を受け取る機会が得られます。
同居している親との関係においても、面会交流に快く送り出してもらえることで、離れて暮らす親と繋がりのある自分を受け入れてもらえているという愛情を実感する機会となります。
したがって、離婚する際は、基本的には面会交流について事前に十分に話し合うことが望ましいです。
ただし、DVやモラハラがある事案、その他お子さんの状況次第では、面会交流を制限すべきケースもあります。
面会交流について不安がある方は、その実施の是非、面会交流の頻度、方法などについて、離婚専門の弁護士に相談し、助言をもらうと良いでしょう。
子供の扶養はどうなる?〜養育費について〜
離婚すると、これまでの生活状況が一変します。
特にお子さんがいると、今後の教育やそのために必要なお金のことを考えておく必要があります。
子供の親権を取得する側(多くは母親)はもちろん、親権を取得しない側(多くは父親)も子供の扶養義務があります。
離婚は夫婦の問題であって、親子関係には全く影響しないからです。
子供の扶養義務の中でも、養育費は特に重要です。
養育費はいくらが相場?
養育費は、双方の親の収入を前提に算定されますが、その算定される金額は、子供がその家庭の両親が同居していたら得られる生活水準を金額換算したものとなります。
すなわち、両親が離婚してしまった子供にとって、同居していない親からの養育費があることで初めて両親が揃った家庭に近い生活水準が得られ、衣食住が充実し、健康な生活をすることができるのです。
また、子供にとっては、養育費が支払われているという事実により、一緒に住んでいない親からの愛情を感じることができます。
したがって、養育費の適正額は、具体的な生活の状況(父母の収入、子供の数や年齢等)によって異なります。
具体的な状況に照らした養育費の適正額を知りたい方は、こちらのページをご覧になってください。
離婚すると子供の相続はどうなるの?
相続とは、亡くなられた方(被相続人)が所有していた財産上の地位を、相続人に引き継ぐことです。
相続においては、遺言がなければ、法定相続どおり、配偶者や血族がお亡くなりになられた方の遺産を引き継ぐことになります。
離婚をすると、配偶者ではなくなるので、元妻や元夫は相続権はありません。
それでは子供に相続権はあるのでしょうか?
民法は、子供を第1順位の相続人と規定しており、かつ、その地位は離婚によって影響を受けません。
したがって、離婚しても、基本的に子供は常に相続権があることになります。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
引用元:民法|電子政府の窓口
子供に相続させたくない場合はどうすればいい?
多くのケースでは、子供の相続権が争いとなることはありません。
しかし、稀に、子供に遺産を残したくないという方もいます。
このような場合、「子供に遺産を相続させない内容の遺言書を作成する」という方法が考えられます。
ただし、子供には遺留分(一定程度の遺産の取り分)があるため、子供が遺留分を請求した場合、完全に遺産を渡さないということは難しいです。
遺留分についてくわしくはこちらをご覧ください。
子供がいる方に多い離婚のタイミング
子供に対し、状況に応じた適切な配慮さえすれば、特に離婚するタイミングにこだわる必要はありません。
もっとも、子供の進学、進級をひとくぎりとして離婚に至る方は多いように思えます。
また、別居についても、子供の長期休暇を利用して踏み切られる方が多いように感じられます。
離婚・別居いずれも生活の変化を生じさせる事情です。
離婚・別居に踏み切るにあたり、子供を含む環境が変化するタイミングや、学業等に影響の少ない時期を選ぶことは、合理的な判断といえるでしょう。
迷っている場合は別居という選択肢もある
離婚について迷いがある場合、「当面の間別居する」という方法を取られる方もいます。
相手と離れてみて、実際に子供にどのような影響が出るかを試すことができるという点ではメリットがあるでしょう。
しかし、別居とは言え、相手にとっての影響も大きいため、相手の感情を害してしまい、離婚に進んでしまう可能性が懸念されます。
また、別居期間中の生活費を確保しなければなりません。
別居期間中の生活費については、婚姻費用としって、収入が少ない方(通常妻側)が収入が多い方(通常夫側)に請求できます。
婚姻費用の金額や請求方法について、くわしくは以下ページをご覧ください。
離婚後にもらえる各種手当について
離婚してシングルマザー(母子家庭)になった場合、経済的に苦しい状況に陥ってしまうことが考えられます。
経済的に苦しい方を守る、救うために国や自治体では、母子家庭や父子家庭が受けられる公的援助を設けています。
公的援助には、一定の金銭を支給する制度や税制の優遇措置があり、家計を助けてくれるため、特にシングルマザーにとっては重要となります。
これらを上手に活用し、苦しい生活から脱却しましょう。
まとめ以上、離婚が子供にどのような影響を与えるのか、状況別に詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。
離婚すると、夫婦間の不和を子供が感じなくなるため、プラスとなる面もあります。
しかし、他方で、子供の年齢や状況によって、様々なストレスがかかることが予想されます。
これらのストレスを少なくするためにも、子供への接し方は十分注意しなければなりません。
また、婚姻費用、養育費、面会交流などの条件を適切にすることが重要となります。
これらについては、専門的な知識が必要となるため、離婚問題に詳しい弁護士へ相談されることをお勧めいたします。
この記事が離婚に悩む方々のお役に立てれば幸いです。